抄録
日本に広く分布する「火山灰土(Andosol)」,別名「黒ボク土」は火山灰の降下堆積と降灰休止期における植物(主としてススキのようなイネ科草本)の繁茂の繰り返しによって地表面が更新されて生成されたものであり,火山灰土の厚くて黒い腐植層には,過去の生物気候環境の変遷が記録されている。
本論文では,気候植生の異なる過去の時期に,それぞれ対応して生じた腐植集積の適地の存在とその移動の状況が,火山灰を母材とする表土腐植層と埋没腐植層の調査および土壤化学的方法による腐植諸特性の検討によって総合的に確かめられることを明らかにした。本論文では,土壤生成と現在の気候環境について検討を行うために現地気温観測とランドサット熱映像解析を行った。そこで本稿では,論文概要につづいて,土壤生成と生物気候環境の解明におけるリモートセンシング熱映像解析の有効性と若干の解析結果について述べる。