抄録
本研究は従来詳しく論じられていなかった土石流先端部の運動機構を明らかにするため,先端部の濃度,粒子の動きに着目し,これを実験的に考察したものである。濃度については先端部の流下方向の濃度変化を調べ,またハイスピードビデオから得られたスチール写真を用いて粒子の動きを測定した。その結果,次のようなことが明らかになった。土石流先端部は流下方向に濃度分布を持ち,最先端に近い部分ほど濃度が高くなっている。ただし,勾配が15°,17°の固定床の実験では水と粒子が分離した流れになっている可能性がある。先端部における粒子移動の収支を調べると,水路中央部と側方部との間に粒子移動のある流れが存在し,その流れの大きさは勾配,河床条件の違いにより異なっている。また,先端部の流速分布形はダイラタント流体的な後続流とは異なり,ダイラタント流体の流速分布形より下に凸な分布形を示している。この流速分布形の違いは水路中央と側方部とに粒子移動のある流れの有無と対応しており,先端部を考える場合にはこの水路中央部と側方部とに粒子移動のある流れを考慮する必要がある。