2008 年 47 巻 5 号 p. 262-268
規制緩和の流れの中で,自主保安への移行がいわれて久しい.設備の老朽化,ベテランの大量引退,人員の削減,教育機会の減少などという問題を抱え,日本の化学産業の安全管理においては新しいコンセプト構築の必要性に迫られている.日本の化学産業の安全管理は,ヒヤリハット報告,危険予知訓練,事故事例の水平展開,改善の励行など,現場レベルでの小集団活動をベースとしたボトムアップ型といえる.一方,欧米の安全管理はフレームワーク構築にもとづき安全管理のプログラム要素が実行されるトップダウン型といえよう.ここでは,日本ならびに欧米の化学産業の安全管理の現状と問題点,安全へのアプローチの違いを概観し,安全管理にあたっての課題とこれからの方向性につき考察する.