2015 年 54 巻 2 号 p. 92-100
組織の安全性向上のためにヒューマンファクター(HF)概念の導入は有効とされるが,第一線従事員にその理解や実務への適用を促すことはそれほど簡単でない.本稿では,HF 概念の浸透や実践に向けた課題および取組みについて考察する.まずJR 東日本におけるそれらの取組み例をみながら,その方法論について社員の自発性をキーワードに述べる.次に,それらの取組みを推進するマネジメントにおいて基礎となる「(相手に)伝える」と「(相手が)わかる」ことの理解の重要性について考察する.最後にこれらにもとづき,HF 概念の深い理解や作業への適用について,指示型の一方通行的な取組みよりは自発性にもとづく試行錯誤型の取組みの有効性について論じる.