2015 年 9 巻 1 号 p. 43-54
近年、高齢化に伴い老いや死に備える必要性が高まるとともに、終活と呼ばれる、自らの死に備える動きが現れた。本研究では、自らの老いや死に備える行動を「死の準備行動」とし、そのとらえられ方、行われ方、影響について、エンディングノート作成に取り組む高齢者8名のインタビュー調査から考察した。分析の結果、「死の準備行動」は、多様な希望を残すためではなく、迷惑をかけないためという他者への配慮に基づき行われ、高齢者にとっては現状整理と問題把握が促されること、他者へ迷惑をかけるという不安からの解放につながることが明らかとなった。また、他者と死について話すことが困難だからこその「死の準備行動」という構図がうかがえた。一方、医療や介護の意思決定などは、自身の将来像をどのようにイメージするかによっては困難となるため、これをいかに支援するか、そしていかに「死の準備行動」を充実した生につなげていくかが課題であった。