抄録
サゴヤシは,地上20m以上にも達する巨大な単子葉植物である.したがって,裸子植物や双子葉植物の茎や根のように,2次肥大生長を行う維管束形成層(vascular cambium)はなく,地上部の組織は茎頂の頂端分裂組織(apical meristem)に由来する1次組織(primary tissue)である.また,「茎」は不整中心柱(多数の並立維管束が環状とならずに不規則に散在した中心柱(茎の内部で,維管束が配列する部分))であり,裸子植物や双子葉植物で認められる真正中心柱(多数の並立維管束が環状に配列した中心柱)ではない.このようなことから,サゴヤシは巨大な植物ではあるが,「茎」を,木本植物の主軸に用いられる「幹」などと呼ぶのは適当ではなく,本編では「茎」を用いて記した(茎に形態については本連載記事の別稿に譲る).