抄録
本研究は,インドネシア,南東スラウェシ州ポハラ地区のアベリサワ村で2008年5月から2009年5月にわたり,サゴヤシの吸枝の生長と小葉の無機元素濃度に及ぼす地下水位とその無機元素濃度の変動の影響について明らかにすることを目的として行われた.地下水位の異なる2箇所(D:地下水位が土壌表面下0〜15cm,W:同0〜+10cm)を選び,2008年5月から2009年の5月まで2ヶ月毎にDとWの各3箇所で地下水位を記録するとともに,地下水を採集して無機元素(無機態—N,P,K,Ca,Mg),pHおよび電気伝導度(EC)を分析した.また,同時に,DとW下に生育している約1年生の吸枝各5個体を選び,生育調査を行うとともに,最も若い展開葉の小葉を採集して,全—N,P,K,Ca,Mgを分析した.調査期間中の地下水位は,D区では+1.1cmから-16.3cmの範囲で,W区では+2cm〜+8.8cmの範囲で変動したが,この地下水位の変動は降水量の多少とは一致しなかった.地下水位の変動は,そこに含まれる無機元素濃度,pHおよびEC,さらには吸枝の生長および最も若い展開葉の小葉の無機元素濃度にほとんど影響を及ぼさなかった.これらの結果は,約+10cm〜-20cmの地下水位の変動の範囲では,吸枝の生長に明瞭な影響を及ぼさないことを示唆した.今後,吸枝の生長に影響を及ぼす地下水位の範囲についての研究が必要である.