抄録
本研究は、重症心身障害児(者)施設(以下、「重症児者施設」)に勤務する職員(以下、「職員」)が重症児者施設に入所する重症心身障害児(者)(以下、「入所児者」)の反応やサインを捉える際に生じる「わからなさ」に焦点をあて、「わからなさ」の実態とその要因を明らかにすることを目的とする。研究方法は11名の調査協力者と研究ミーティングを行った際に語られた内容について質的記述的分析を実施した。分析の結果、「わからなさ」が起こる要因として、【実践観の違い】、【入所児者の捉え方の違い】、【実践経験の違い】、【入所児者に関する情報のつながりの不十分さ】、【入所児者の生活経験の少なさ】の5つのカテゴリーが、「わからなさ」の実態として、【入所児者の反応や変化の様子】、【入所児者の反応やサインを捉える際の職員の判断】の2つのカテゴリーが生成され、合わせて7つのカテゴリー、11のサブカテゴリー、36のコードが抽出された。
わからなさが生じる一番の要因は、職員の【実践観の違い】であった。その背景には、職員の専門職としての価値観と職員個人の価値観の違いによることが明らかとなった。また、【入所児者に関する情報のつながりの不十分さ】や【入所児者の生活経験の少なさ】が、【入所児者の反応やサインを捉える際の職員の判断】や【入所児者の反応や変化の様子】に直接影響していることが明らかとなった。