抄録
この論文では,現代の意識と心理療法のあり方について,摂食障害の事例を通して考察した。セラピーのプロセスの中で,Cl は現実的な次元では直面する具体的な問題に取り組むことと,他方では本人にとってだけでなく現代の社会においても意味ある夢に取り組むことの両方を通して,主体性を確立していった。セラピーのプロセスを検討する中で,現代の意識のあり方の変化に応じて心理療法も変化する必要性が明らかになった。治療者は,心理療法の原則の重要性を認識しつつも,あえてそこにとらわれず,心理療法のプロセスで起こってきていることに開かれている必要があるといえる。