2013 年 25 巻 3 号 p. 65-78
本事例は, 主に半分のサイズの砂箱を用いて自己テーマに取り組んだ20代後半の女性の箱庭療法過程である。彼女は, リストカットして辛さを封じていたが, 箱庭を通して困難に打ち勝っていく。彼女の暗闇に吸い込まれそうな怖さは, 子どもから大人へのイニシエーションの未完から起こり, 乗り越えるべき課題だった。語りとともに箱庭表現で取り組み始めるが, 核心に近づくと表現できず, 箱庭や語り以外の表現(夢・描画など)を借りて補った。半サイズの箱庭は, 上下軸(垂直-水平軸)を用いて, 自我境界を越え-再生-再構築し, その小さな空間では, かなしみと孤独が露呈され, 受けとめられた。