箱庭療法学研究
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原著
「かたちづくること」と美的治癒
芸術療法のもうひとつの治療機序
東畑 開人
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キーワード: , 芸術療法, 消化
ジャーナル 認証あり

2014 年 27 巻 1 号 p. 3-15

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抄録

従来,芸術療法の治療機序は,無意識の意味を汲み出すこととして理解されてきた。しかし,FreudやJungが気がついていたように,芸術には意味を汲みだし理解することと,それを美的に「かたちづくること」の両面が含まれている。本研究では芸術療法における美をめぐる治療機序──美的治癒の心的メカニズムについて検討を行った。そのために人格障害圏のクライエントが深く退行した時期に,芸術療法が取り組まれた事例を呈示した。その結果として,「かたちづくること」とは汚い未消化物を浄化し,消化して,そこに表面を作り出していく営みであり,それが早期母子関係的な世話する関係性の中で生じることを示した。最後に美的治癒が芸術療法一般に内在するものであることについて検討を行い,それが文化の次元と深く関わるがゆえに昇華の問題系であることを今後の課題として挙げた。

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© 2014 日本箱庭療法学会
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