抄録
本研究では,「なぐり描き(Mess Painting)」の技法が,被験者のイメージをどのように変化させ,どのように退行を促進させるかを調べるために用いられた。被験者は美術専攻の大学院生である。結果は,4つの視点を与えてくれた。まず,この技法は行動面における変化をもたらした。被験者は,生き生きと活動的になった。従って,この技法の退行促進的な作用が心的エネルギーを増大させたと考えられた。2つ目は,この技法の退行促進作用は,被験者の過去の外傷的な体験に起因する抑圧された感情を露わにした。被験者は「自我のための」退行を通じて,自分の感情を扱えるようになった。3つ目は,被験者の人間関係が変わり,より友好的になったことである。これは主として実験者と被験者との間の面接でのコミュニケーションを通じて変化していったと考えられる。最後に,被験者は自分の人生と創作における理想的なイメージに出会った。このイメージは最後のセッションで今までよりもより深い退行を通じて生じたと思われる。この技法は,その退行促進作用を通じて,いくつかの興味深い心理学的現象を引き起こしたと考えられる。