2017 年 29 巻 3 号 p. 15-26
本研究では,発達障害と診断を受けながらも発達障害とは見立てられない子ども3事例から,発達の偏りとプレイセラピーにおける変容について検討した。3事例はみな自他の区別は成立しているものの,関わりが一方向的であるなどの自他関係の偏りが見受けられた。さらに,3人のうち2人は,年齢不相応に思えるほど発達が先に進んだ様子がみられ,自己を眺める視点が優位であった。プレイセラピーでは優位であった視点が崩れていくプロセスがみられた。あとの1人は,豊かな想像性を抱える器が十分に機能していないと考えられ,プレイセラピーを通して内的な器をつくっていった。以上から,このような子どもたちには,自他関係の偏りなどの発達の偏りがみられ,プレイセラピーはそれをゆるやかにすると考えられた。