2018 年 31 巻 1 号 p. 15-27
箱庭制作過程及び制作後の味わう過程において,制作者と箱庭の関係性には様々なものが考えられる。本研究は制作者の自我と箱庭制作体験及び出来た箱庭の関係を明らかにすることで箱庭制作体験を検討することを目的とした。60名の参加者は箱庭を制作し,箱庭との関係性を測る自作質問紙(自我と箱庭イメージの関係性尺度)に回答し,その後半構造化面接で制作体験について尋ねられた。その結果,制作者の自我と箱庭イメージの関係性は「親和性」「異質性」の二因子構造が抽出された。語りを分類し検討したところ,親和性高群の意識的な体験,異質性高群には主にアイテムによって引き起こされる制作者の意図を超える制作体験が抽出された。親和性高低と異質性高低を組み合わせた4群で比較したところ,それぞれの群の制作体験の特徴が示唆された。よって,自我と箱庭作品の関係性が明らかになり,これらを検討することが箱庭制作体験に多大な示唆を与えることがわかった。