2019 年 32 巻 2 号 p. 3-14
本研究は,認知症高齢者の箱庭表現における特徴を認知症重症度レベル別に見出すための基礎的研究である。手続きとして認知症高齢者24名の各8回に及ぶ箱庭作品を,印象評定により「統合性」「充実性」「力量性」「柔軟性」の4次元および下位尺度である対形容詞20項目の得点平均値を比較し,認知症重症度レベル別の箱庭表現の特徴を検討した。その結果,軽度と中等度・重度の差異は「力量性」次元の下位尺度「女性的-男性的」に有意な差がみられた。軽度・中等度と重度の差異は「貧弱な-豊かな」「さびしい-にぎやかな」(充実性),「浅い-深い」(力量性),「アブノーマルな-ノーマルな」(統合性)に有意な差がみられた。このように,認知症高齢者の箱庭表現における認知症の影響はこれらの評価軸において関連が深いと考えられた。印象評定にて箱庭表現における認知症の影響を検討する方法により,より精確に個人特有の表現を見出し,より深く内的世界を理解するための参考となる知見を得ることができた。