2020 年 32 巻 3 号 p. 55-66
本研究では,感情と繋がりにくい女性の事例を提示し,心理療法における〈遊び〉の生成および展開について考察する。面接当初,クライエントは今ここの体験や感情よりも常識や規範といった外の要素に目を向けがちであり,彼女の“内”と“外”は明確に分断されているようであった。心理療法過程においてクライエントはたびたび箱庭や夢に取り組んだ。これらはいずれも“内”でも“外”でもない中間領域であり,〈遊び〉が中動的に生じる場である。本事例においてクライエントは,第三項の中で〈遊び〉のプロセスを体験することによって,隔てられていた“内”と“外”とを繋ぎ,自身の感情にもふれることができるようになっていった。クライエントが〈遊び〉を取り入れられるようになるには,心理療法そのものが〈遊び〉を保障し体現するものである必要があるであろうと考えられる。