2020 年 33 巻 1 号 p. 3-12
本研究では現代の老年期の人々の自己のあり方を知ることを目的とし,60歳以上の対象者に自己感尺度(松岡,2015),対人恐怖心性尺度(堀井,2012),夢に関する質問項目を含む質問紙調査を実施した。その結果を大学生の群の結果と比較したところ,老年期の人々は大学生よりも自己感が有意に高く,対人恐怖心性が有意に低かった。そして,これらの自己感と対人恐怖心性に関する異同は夢の構造面にも現れた。“夢の出来事が夢の私の視点から語られること”,“夢の私が葛藤を持続させること”は,老年期の人々の夢の一貫した特徴であった。また,「子どもの頃に見た印象的な夢」における“夢の私に友好的な他者の存在”や,「最近見た印象的な夢」における“相互のやりとりはないものの夢の私と対象が場を共有する状況”も,老年期の人々の夢の特徴として現れた。これらの結果は,現代の老年期の人々が持つ高い自己感と協調的自己のあり方を示唆するものと考えられた。