2026 年 39 巻 1 号 p. 51-61
本論文では,発達障害の診断を求めて来談した男性Aとの面接について検討し,そのプロセスで鍵となったサイボーグのイメージについて議論を深めた。来談時,Aはそれまでの人生での不当な評価や理不尽な体験を認定するものとして発達障害の診断を求めていた。診断を得たAは誰にも言わず新たな道へ出立し,セラピーも中断した。10年の時を経て再来した後,Aはサイボーグに憧れる気持ちを打ち明け,サイボーグスーツとハイソックスに身を包み面接に現れるようになる。当初それは弱い自分に能力を追加して強化する試みであったが,サイボーグのイメージがAという固有の主体に問題を帰す枠組みを解体し,他者や環境との接点にハイブリッドな主体を生成することを可能にし,Aを個性化の道へ導いた。