2024年4月から本格的運用を開始した自律的化学物質管理への移行に伴い,個別規制の強い特別規則対象化学物質以外では,措置について自律的判断を重んじる制度転換がなされた.このように化学物質管理をとりまく制度は大きく変化しつつあるが,化学物質による労働災害を効果的に予防するためには,化学物質がもつ危険性・有害性を把握することが重要である.しかしながら,法規制がある化学物質が原因となった労働災害も依然として発生していることから,これまで法規制が行われてきた化学物質ですら,現状では作業者が危険性や有害性を充分に理解できているとは言い難い.そこで本研究では,化学物質の取り扱い企業に勤務する従業員を対象に,法規制による化学物質の危険性・有害性の認識へ影響する要因の特定を目的とした.日本国内の製造業かつ化学物質を取り扱っている企業に勤務する従業員の約2,000名を対象に,Web上での選択式質問紙調査を行った.質問項目は,先行研究を踏まえ,基本属性,経験,職場教育・訓練,知識,化学物質に対する態度,職場経験雇用形態,および認識とした.解析方法は,フィッシャーの正確確率検定およびロジスティック回帰分析を用いた.化学物質を取り扱っている企業に勤務する従業員では,化学物質を取り扱っていない者を含め,法規制のない化学物質より法規制のある化学物質の方を危険または有害であると認識している者の割合が多かった.法規制による化学物質に対する危険性・有害性の認識に影響する要因は,性別,法令で規制されている化学物質の存在の知識,化学物質を規定する特別規則の知識であることが示唆された.化学物質の取り扱い企業に勤務する従業員を対象としたweb質問紙調査により,法規制による化学物質の危険性・有害性の認識へ及ぼす着目すべき要因として,化学物質関連法令の知識が認められ,法令情報の共有の重要性が再確認された.
With the full-scale transition to autonomous chemical substance management in April 2023, there has been a system shift that emphasizes autonomous decision-making regarding safety measures for most chemicals. Though stringent individual restrictions remain for substances with special regulations, understanding the physical and health hazards of all chemicals is crucial for preventing occupational accidents. While education and training are paramount, accidents involving legally regulated chemicals suggest incomplete worker education. This study investigated factors that influence the perception of the physical and health hazards of chemical substances governed by laws and regulations. A web-based survey using a multiple-choice questionnaire was distributed to 2,000 employees in Japanese manufacturing companies that handle chemicals. Aligned with prior research, the questionnaire encompassed aspects like basic attributes, experience, workplace education/training, knowledge and attitude toward chemicals, work experience, employment status, and regulatory perceptions. Analyses using Fisher’s exact probability test and logistic regression revealed that a significant proportion of employees, even those who do not directly handle chemical substances, perceived legally regulated substances to be more hazardous or toxic than non-regulated ones. Notably, awareness of specific regulations and familiarity with their existence were key factors shaping these perceptions. The survey found that knowledge regarding relevant laws and regulations is a major determinant of the awareness of the hazards and toxicity of legally regulated chemicals. This highlights the importance of disseminating clear information on such regulations to enhance overall understanding and safety.
日本では1972年に労働基準法から分離独立して成立した労働安全衛生法および関連法令によって,職場における化学物質の管理が行われてきた.具体的には作業環境管理,作業管理,健康管理の労働衛生の3管理を中心に,さらに,総括管理および労働衛生教育までを含めた5管理によって行われてきた.このような法規準拠型の労働安全衛生の取り組みの制度は,労働災害の減少に対して一定の効果を発揮してきたと考えられる.化学物質に関しては,2016年より化学物質を取り扱うすべての事業者を対象に,特別規則等の規定がない化学物質を含む安全データシート(Safety Data Sheet: SDS)対象物質の化学物質のリスクアセスメント(RA)の実施が義務化された.しかしながら,化学物質に起因する労働災害発生件数はRA実施の義務化後も改善を認めていない[1].RA実施が義務付けられている化学物質は2022年12月段階で674種類であるが[1],日本の職場で使用される化学物質は約70,000種類と言われており,さらに毎年1,000種類の化学物質が新規物質として届出がされている[2].その中にはヒトに対する有害性が充分に調べられていない化学物質も多く存在する.厚生労働省が実施した「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会(2019年9月~2021年7月)」の報告書において[3],化学物質による休業4日以上の労働災害のうち,およそ8割が特別規則(特定化学物質予防規則など)の規制対象外の化学物質に起因すると報告されている.
このような状況から厚生労働省は,職場の化学物質管理をこれまでの「法規準拠型」から「自律的管理型」に変更することを目的に労働安全衛生施行令等を改正し,2022年4月から段階的に運用を開始し,2024年4月から本格的に運用を開始した[4, 5].この自律的管理型への方向転換により,今後は職場に応じた措置の自律的な決定と実施が重要となる.この職場に応じた処置を考える場合,安全データシート(SDS)の活用が重要となる.SDSは化学物質について多くの情報が記載されており,化学物質取り扱い作業者はSDSの内容を確認することで,その化学物質が有する危険性や有害性を把握でき,RAの実施を始めとして,健康障害を予防するための措置を考える際の情報源となる.急性曝露時などの緊急時における対応の有用な情報源となりえるほか,化学物質を取り扱う労働者に対する教育を行う際の有用なツールにもなりえる.また,SDSに記載されている情報は,化学物質のリスクアセスメントを行う際の情報源となり,緊急時の対応を講じる際の情報源としても利用可能である.
さらに,自律的管理では作業者の職場の教育・訓練も重要であると考える.その教育内容を考える際には,教育・訓練の効果に影響する要因に配慮する必要がある.職場の安全衛生教育に関する先行研究では,教育・訓練の効果に影響する要因として,指導者の役割,訓練方法の違い,労働者の性格や態度(姿勢),知識,認識,職場の文化,雇用形態,あるいは具体的な課題を利用する方法や労働者の危険作業の拒否権利などが影響しているとされる[6–14].また,専門家と一般人のリスク認知の違いや,性や人種による環境リスクの認知の違いも報告されている[15, 16].そして,化学物質による労働災害を防止するためには,さらに労働災害の原因となる化学物質の危険性・有害性について国連による「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)」(国連GHS勧告)に基づくSDSやラベルの理解,労働者の高等教育,労働者の知識や経験,あるいは教育方法としての爆発火災や化学物質との接触による健康障害を防止するための予防的なRAの理解,化学物質の管理のための法律の知識,および職場での教育・訓練の経験などの影響を考慮する必要があるとされている[17, 18].
化学物質による労働災害を予防するため,職場での労働者の化学物質管理のための教育・訓練の有効性を高めることが重要である.本研究では,化学物質の取り扱い企業に勤務する従業員を対象に,法規制による化学物質の危険性・有害性の認識へ影響する要因の特定を目的として調査を行った.
調査対象者の選定および調査方法
マーケティングリサーチ会社である株式会社インテージに登録している日本国内の製造業かつ化学物質を取り扱っている企業に勤務する従業員,約2,000名を対象に選択式質問紙調査を行った.インターネット上で提示された研究説明文書を読み,同意した者のみ質問に回答した.回答は匿名化されたMicrosoft excelのファイルとして受け取った.なお,調査期間は2021年10月26日から28日であった.
質問紙調査項目
Table 1に示す解析対象の14項目を含む28項目からなる独自に作成した質問調査票を使用した[19].14項目は分析統計解析に用い,それ以外の14項目は回答者の確認と記述統計解析に用いた.
質問内容 | ||
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【1】基本属性 | (1) | あなたの性別をお答えください。 |
(2) | あなたの年齢をお答えください。 | |
- | あなたの勤務先の業種をお答えください。 | |
- | あなたの勤務先では化学物質の取り扱いはありますか? | |
【2】経験 | (3) | あなたご自身は,現在化学物質を取り扱っていますか。取り扱っている場合は取り扱い経験年数をお答えください。 |
(4) | あなたは,安全データシート(SDS)を見たことがありますか? | |
【3】認識 | (5) | 法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えますか? |
【4】職場教育・訓練 | (6) | 職場の先輩から,安全(危険性〔けが〕・有害性〔病気〕)について教育やアドバイスを受けたことがありますか? |
- | どのような方法で教えてもらいましたか?(該当するものすべてを選んでください) | |
(7) | あなたは,あなたの職場の化学物質リスクアセスメントに参加していますか? | |
(8) | あなたが,効果的と考える危険性〔けが〕・有害性〔病気〕についての安全教育は何ですか?(該当するものすべてを選んでください) | |
- | 化学物質リスクアセスメントは,現場の作業者の安全に役立っていると思いますか? | |
【5】知識 | (9) | あなたは,職場の化学物質リスクアセスメントの結果を知っていますか? |
- | あなたは,どうやって化学物質リスクアセスメントの結果を知りましたか?(該当するものすべてを選んでください) | |
(10) | 法律で規制されている化学物質と,規制されていない化学物質がある事を知っていますか? | |
(11) | あなたは,化学物質の法令を知っていますか?ここでの「化学物質の法令」とは,特定化学物質予防規則(特化則),有機溶剤中毒予防規則(有機則)のことを示します。 | |
- | 特別有機溶剤を知っていますか? | |
- | 特別有機溶剤に該当する物質をどのように考えますか? | |
- | 特化則や有機則等の化学物質に係る法令が無くなった場合の影響について,あなたの考えを選んでください。(該当するものすべてを選んでください) | |
- | あなたは,化学物質が,法令で製造禁止にされているもの,ラベルの表示および安全データシート(SDS)の交付が義務になっているもの,SDS交付が義務となっていないものに分かれている事を知っていますか? | |
【6】化学物質に対する態度 | (12) | あなたは,厚生労働省のホームページ等で化学物質の情報を調べた事がありますか? |
- | 調べた項目は何か:安全性,危険性,有害性,その他 | |
- | あなたが,化学物質の情報を「調べたことがない」という理由は何ですか?(該当するものすべてを選んでください) | |
【7】職場経験 | (13) | あなたは,職場での事故やけが,病気になった経験がありますか? |
- | 職場の事故やケガが原因で会社を4日間以上休んだことがありますか? | |
【8】雇用形態 | - |
あなたの職種は何ですか? あなたご自身についてお尋ねします。 事務職,製造業 |
(14) | あなたの職位は何ですか? 非正規社員,正社員,管理職(正社員),その他 | |
- | あなたの職場の事業場規模はどれくらいですか? |
分析統計解析対象の14項目として,【1】基本属性として(1)性別および(2)年齢,【2】経験として(3)職場での化学物質の取り扱いの有無と年数,(4)SDSを見た経験,【3】認識として(5)法律の規制がない化学物質に比べ法律の規制がある化学物質の危険性・有害性の認識,【4】職場教育・訓練として(6)職場の先輩による教育,(7)RAへの参加の有無,および(8)効果的と考える危険性・有害性についての安全教育,【5】知識として(9)RAの結果の知識,および(10)法令で規制されている化学物質の存在の知識,(11)化学物質を規定する特別規則の知識,【6】化学物質に対する態度として(12)化学物質の情報の検索の有無,【7】職場経験として(13)労働災害の経験の有無,および【8】雇用形態として(14)雇用形態について尋ねた.
その他の記述統計的解析用の14項目は,自身が経験した職場の教育・訓練,RA結果を知った方法,化学物質の法規制,化学物質の規制内容の違い,特別規則の知識,特別有機溶剤の知識,特別規則の廃止の影響についての考え,化学物質の情報を調べなかった理由,4日以上の休業の経験の有無,事業場規模などとした.
データの統計解析
得られた2,095名のデータの統計解析は,記述統計解析はMicrosoft Excel,分析統計解析は統計解析ソフトEZR version1.6[20]およびIBM SPSS Statistics 27(IBM)を用いた.まず,基本属性や各質問項目の回答割合を整理した.次に,法律の規制がない化学物質に比べ法律の規制がある化学物質の危険性・有害性の認識が高いかどうかについて,【3】認識として(5)「法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えますか?」(危険・有害=1,安全・解らない=0)の回答を解析した.つぎに,化学物質の危険性・有害性の認識への法規制の有無を目的変数とし,単独での他の要因の関連性を確認するために,χ2検定(5名未満の該当者がある場合にはフィッシャーの正確確率検定)を行った.そして,要因の(5)を目的変数とし,関連性が認められた要因を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った.年代および化学物質取り扱い年数以外は,2値として解析した.なお本研究は,産業医科大学の倫理委員会で承認を得て実施した(受付番号R2-075号).
回答者の属性・経験・知識
Table 2に,回答者2,095名の基本属性および経験や知識などの回答割合,および【3】認識として(5)「法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えますか?」の違いによる回答割合およびχ2検定の結果を示す.
【3】(5)認識:法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えますか? | ||||||||||
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全体(n=2,095) | 安全・解らない:0 | 危険・有害:1 | ||||||||
n | % | n | % | n | % | P値 | ||||
【1】基本属性 | (1) | 性別 | 男性 | 1,783 | 85.1 | 583 | 27.8 | 1,200 | 57.3 | 0.003 |
女性 | 297 | 14.2 | 127 | 6.1 | 170 | 8.1 | ||||
未回答 | 15 | 0.7 | 6 | 0.3 | 9 | 0.4 | ||||
(2) | 年齢 | 20代 | 64 | 3.1 | 20 | 1.0 | 44 | 2.1 | 0.134 | |
30代 | 250 | 11.9 | 87 | 4.2 | 163 | 7.8 | ||||
40代 | 700 | 33.4 | 251 | 12.0 | 449 | 21.4 | ||||
50代 | 823 | 39.3 | 289 | 13.8 | 534 | 25.5 | ||||
60代 | 237 | 11.3 | 65 | 3.1 | 172 | 8.2 | ||||
70代以上 | 21 | 1.0 | 4 | 0.2 | 17 | 0.8 | ||||
【2】経験 | (3) | 化学物質の取り扱い | 現在取扱っている | 961 | 45.9 | 290 | 13.8 | 671 | 32.0 | <0.001 |
現在は取り扱っていない/ 取り扱ったことはない |
1,134 | 54.1 | 426 | 20.3 | 708 | 33.8 | ||||
化学物質取り扱い経験年数 | 1年未満 | 55 | 2.6 | 18 | 0.9 | 37 | 1.8 | 0.008 | ||
1~5年未満 | 161 | 7.7 | 53 | 2.5 | 108 | 5.2 | ||||
5~10年未満 | 124 | 5.9 | 39 | 1.9 | 85 | 4.1 | ||||
10年以上 | 621 | 29.6 | 180 | 8.6 | 441 | 21.1 | ||||
現在は取り扱っていない/ 取り扱ったことはない |
1,134 | 54.1 | 426 | 20.3 | 708 | 33.8 | ||||
(4) | Q7: あなたは,安全データシート(SDS)を見たことがありますか? | 見たことがある | 1,436 | 68.5 | 428 | 20.4 | 1,008 | 48.1 | <0.001 | |
見たことがない | 659 | 31.5 | 288 | 13.7 | 371 | 17.7 | ||||
【4】職場教育・訓練 | (6) | 職場の先輩から,安全(危険性・有害性)について教育やアドバイスを受けたことがありますか? | ある | 1,676 | 80.0 | 533 | 25.4 | 1,143 | 54.6 | <0.001 |
ない | 419 | 20.0 | 183 | 8.7 | 236 | 11.3 | ||||
(8) | あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか |
雇い入れ時の安全教育 非選択 |
613 | 29.3 | 244 | 11.6 | 369 | 17.6 | <0.001 | |
雇い入れ時の安全教育 選択 | 1,482 | 70.7 | 472 | 22.5 | 1,010 | 48.2 | ||||
危険予知活動(KY活動) 非選択 |
696 | 33.2 | 288 | 13.7 | 408 | 19.5 | <0.001 | |||
危険予知活動(KY活動)選択 | 1,399 | 66.8 | 428 | 20.4 | 971 | 46.3 | ||||
化学物質リスクアセスメント 非選択 |
839 | 40.0 | 344 | 16.4 | 495 | 23.6 | <0.001 | |||
化学物質リスクアセスメント 選択 |
1,256 | 60.0 | 372 | 17.8 | 884 | 42.2 | ||||
先輩・同僚からの現場での教育 非選択 |
632 | 30.2 | 270 | 12.9 | 362 | 17.3 | <0.001 | |||
先輩・同僚からの現場での教育 選択 |
1,463 | 69.8 | 446 | 21.3 | 1,017 | 48.5 | ||||
どれにもあてはまらない 非選択 |
1,976 | 94.3 | 639 | 30.5 | 1,337 | 63.8 | <0.001 | |||
どれにもあてはまらない 選択 |
119 | 5.7 | 77 | 3.7 | 42 | 2.0 | ||||
(7) | あなたは,あなたの職場の化学物質リスクアセスメントに参加していますか? | 参加している | 890 | 42.5 | 268 | 12.8 | 622 | 29.7 | <0.001 | |
参加していない | 1,205 | 57.5 | 448 | 21.4 | 757 | 36.1 | ||||
【5】知識 | (9) | あなたは,職場の化学物質リスクアセスメントの結果を知っていますか? | 知らない | 1,211 | 57.8 | 463 | 22.1 | 748 | 35.7 | <0.001 |
知っている | 884 | 42.2 | 253 | 12.1 | 631 | 30.1 | ||||
(10) | 法律で規制されている化学物質と,規制されていない化学物質がある事を知っていますか? | 知っている | 1,536 | 73.3 | 451 | 21.5 | 1,085 | 51.8 | <0.001 | |
知らない | 559 | 26.7 | 265 | 12.6 | 294 | 14.0 | ||||
(11) | あなたは,化学物質の法令を知っていますか?ここでの「化学物質の法令」とは,特定化学物質予防規則(特化則),有機溶剤中毒予防規則(有機則)のことを示します。 | 知っている | 1,119 | 53.4 | 310 | 14.8 | 809 | 38.6 | <0.001 | |
知らない | 976 | 46.6 | 406 | 19.4 | 570 | 27.2 | ||||
【6】化学物質に対する態度 | (12) | あなたは,厚生労働省のホームページ等で化学物質の情報を調べた事がありますか? | 調べたことがある | 620 | 29.6 | 179 | 8.5 | 441 | 21.1 | <0.001 |
調べたことがない | 1,475 | 70.4 | 537 | 25.6 | 938 | 44.8 | ||||
【7】職場経験 | (13) | あなたは,職場での事故やけが,病気になった経験がありますか? | はい | 481 | 23.0 | 159 | 7.6 | 322 | 15.4 | 0.584 |
いいえ | 1,614 | 77.0 | 557 | 26.6 | 1,057 | 50.5 | ||||
【8】雇用形態 | (14) | あなたの職位は何ですか? | 非正規社員 | 253 | 12.1 | 91 | 4.3 | 162 | 7.7 | 0.525 |
正社員+管理職 | 1,842 | 87.9 | 625 | 29.8 | 1,217 | 58.1 | ||||
あなたは,化学物質が,法令で製造禁止にされているもの,ラベルの表示および安全データシート(SDS)の交付が義務になっているもの,SDS交付が義務となっていないものに分かれている事を知っていますか? | 知っている | 1,003 | 47.9 | 280 | 13.4 | 723 | 34.5 | <0.001 | ||
知らない | 1,092 | 52.1 | 436 | 20.8 | 656 | 31.3 | ||||
あなたの職種は何ですか? あなたご自身についてお尋ねします。 | 事務担当 | 436 | 20.8 | 170 | 8.1 | 266 | 12.7 | 0.007 | ||
製造担当 | 862 | 41.1 | 284 | 13.6 | 578 | 27.6 | ||||
研究・開発担当 | 389 | 18.6 | 111 | 5.3 | 278 | 13.3 | ||||
その他 | 408 | 19.5 | 151 | 7.2 | 257 | 12.3 | ||||
あなたの職場の事業場規模はどれくらいですか? | 5人以下 | 41 | 2.0 | 11 | 0.5 | 30 | 1.4 | 0.490 | ||
6~20人 | 138 | 6.6 | 55 | 2.6 | 83 | 4.0 | ||||
21~49人 | 201 | 9.6 | 69 | 3.3 | 132 | 6.3 | ||||
50~100人 | 233 | 11.1 | 80 | 3.8 | 153 | 7.3 | ||||
101~300人 | 385 | 18.4 | 122 | 5.8 | 263 | 12.6 | ||||
301~999人 | 325 | 15.5 | 104 | 5.0 | 221 | 10.5 | ||||
1,000人以上 | 772 | 36.8 | 275 | 13.1 | 497 | 23.7 |
Impact of respondents’ basic attributes, experience, knowledge, etc. and regulations on the perception of hazard and toxicity of chemical substances (χ2 test)
まず,回答者の基本属性および経験や知識などの回答割合としては以下のとおりである.男性が約85%,年齢は40代および50代が約73%,化学物質を取り扱っている者が約46%,そのうち10年以上取り扱っている者が約30%であった.なお,職種として製造担当および研究・開発担当が約60%,所属する事業場規模は301名以上が約52%を占めた.
安全(危険性〔けが〕・有害性〔病気〕)について教育やアドバイスを受けた経験については,「職場の先輩からある」が80%であった.効果的と考える危険性〔けが〕・有害性〔病気〕についての安全教育については(複数回答あり),「雇い入れ時の安全教育」が約71%,「危険予知活動」が約67%,「RA」が60%,「先輩・同僚からの現場での教育(指導,アドバイスを含む)」が約70%であった.職場のRAへの参加は約43%,SDSを見た経験については約69%が「経験あり」であった.職場の化学物質RAの結果の認知については,「知っている」が約42%であった.法律で規制されている化学物質と,規制されていない化学物質があることの知識の有無は「知っている」が約73%,化学物質の法令(特化則,有機則)の知識の有無については,「知っている」が約53%であった.法律の規制がない化学物質に比べ法律の規制がある化学物質をどのように考えるかについては,「安全・わからない」が約34%,「危険・有害」が約66%であった.なお,化学物質が法令で製造禁止にされているもの,ラベルの表示およびSDSの交付が義務になっているもの,SDS交付が義務となっていないものに分かれていることの知識の有無については,「知っている」が約48%であった.
法規制の有無の違いによる化学物質の危険性・有害性の認識への影響(χ2検定)
つぎに,Table 2の【3】認識として(5)「法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えますか?」の違いによる回答割合およびχ2検定の結果は,以下のとおりである.
法律の規制のない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えるかの認識について,Table 2より,全ての回答者で,「安全」と考えるが約18%,「危険」が約33%,「有害」が約33%,「分からない」が約16%であった.法規制がない化学物質より法規制のある化学物質の方を「危険または有害」であると認識している者の割合が約66%と,「安全またはわからない」の約33%よりも多く,χ2検定の結果からも,化学物質の取り扱い者の方が法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質を「危険あるいは有害」と認識する割合が有意に高かった(P < 0.05).
法規制による化学物質の危険性・有害性の認知へ及ぼす影響要因(χ2検定およびロジスティック回帰分析)
Table 2の法規制の有無による化学物質の危険性・有害性の認識である【3】認識として(5)「法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えますか?」の回答割合およびχ2検定の結果から,この(5)に対して13要因中で10要因に関連性がみられた.すなわち,(1)性別,(3)職場での化学物質の取り扱いの有無と年数,(4)SDSを見た経験,(6)職場の先輩による教育,(7)RAへの参加の有無,(8)効果的と考える危険性・有害性についての安全教育,(9)RAの結果の知識,(10)法令で規制されている化学物質の存在の知識,(11)化学物質を規定する特別規則の知識,(12)化学物質の情報の検索の有無,の10項目であった.一方,(2)年齢,(13)労働災害の経験の有無,および(14)雇用形態の3要因は,(5)の回答割合に有意な差が認められなかった.
Table 3に,法規制による化学物質に対する危険性・有害性の認識である【3】認識として(5)「法律の規制がない化学物質に比べ法律の規制がある化学物質をどのように考えますか?」を目的変数とし,(6)をさらに分割した(8)の5要因とχ2検定で関連性が認められた要因を合わせた合計14要因を独立変数とし,ロジスティック回帰分析による単変量および多変量(他要因を調整)の解析結果をオッズ比とその95%信頼区間およびP値として示す.多変量解析では,(1)性別,(10)法令で規制されている化学物質の存在の知識,(11)化学物質を規定する特別規則の知識,および(8)の中の「どれにもあてはまらない」が,法規制による危険性・有害性の認識に有意に関連していた.
【3】認識として(5)「法律の規制がない化学物質に比べ法律の規制がある化学物質をどのように考えますか?」 (危険・有害:1,安全・解らない:0) |
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単変量 | 多変量 | |||||||
オッズ比 | 95%信頼区間 | P値 | オッズ比 | 95%信頼区間 | P値 | |||
【1】基本属性 | (1) | あなたの性別をお答えください. | 0.68 | 0.54–0.86 | 0.001 | 0.78 | 0.61–0.99 | 0.039 |
(3) | 化学物質取り扱い経験年数 | 1.10 | 1.05–1.16 | <0.001 | 1.07 | 1.01–1.13 | 0.025 | |
(4) | あなたは,安全データシート(SDS)を見たことがありますか? | 1.83 | 1.51–2.21 | <0.001 | 1.20 | 0.94–1.54 | 0.145 | |
【4】職場教育・訓練 | (6) | 職場の先輩から,安全(危険性・有害性)について教育やアドバイスを受けたことがありますか? | 1.66 | 1.34–2.07 | <0.001 | 0.98 | 0.75–1.28 | 0.881 |
(7) | あなたは,あなたの職場の化学物質リスクアセスメントに参加していますか? | 1.37 | 1.14–1.65 | 0.001 | 0.87 | 0.68–1.11 | 0.266 | |
(8) |
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? 雇い入れ時の安全教育 |
1.41 | 1.16–1.72 | <0.001 | 0.97 | 0.77–1.22 | 0.808 | |
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? 危険予知活動(KY活動) |
1.60 | 1.33–1.93 | <0.001 | 1.16 | 0.92–1.46 | 0.197 | ||
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? 化学物質リスクアセスメント |
1.65 | 1.37–1.98 | <0.001 | 1.08 | 0.86–1.35 | 0.517 | ||
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? 先輩・同僚からの現場での教育 |
1.70 | 1.40–2.06 | <0.001 | 1.25 | 0.99–1.56 | 0.057 | ||
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? どれにもあてはまらない |
0.26 | 0.18–0.38 | <0.001 | 0.43 | 0.27–0.70 | <0.001 | ||
【5】知識 | (9) | あなたは,職場の化学物質リスクアセスメントの結果を知っていますか? | 1.54 | 1.28–1.86 | <0.001 | 0.94 | 0.72–1.22 | 0.625 |
(10) | 法律で規制されている化学物質と,規制されていない化学物質がある事を知っていますか? | 2.17 | 1.78–2.65 | <0.001 | 1.60 | 1.26–2.04 | <0.001 | |
(11) | あなたは,化学物質の法令を知っていますか?ここでの「化学物質の法令」とは,特定化学物質予防規則(特化則),有機溶剤中毒予防規則(有機則)のことを示します. | 1.86 | 1.55–2.23 | <0.001 | 1.33 | 1.03–1.71 | 0.027 | |
【6】化学物質に対する態度 | (12) | あなたは,厚生労働省のホームページ等で化学物質の情報を調べた事がありますか? | 0.71 | 0.58–0.87 | <0.001 | 1.14 | 0.89–1.47 | 0.287 |
Table 4に化学物質を取り扱っている者(961名)のみの情報を用いて,法規制の有無による化学物質に対する危険性・有害性の認識である【3】認識として(5)「法律の規制がない化学物質に比べ法律の規制がある化学物質をどのように考えますか?」を目的変数とし,Table 2のχ2検定で関連性が認められた14要因を独立変数とし,ロジスティック回帰分析による他の要因を調整した多変量解析結果をオッズ比とその95%信頼区間およびP値として示す.化学物質を取り扱っている者については,【3】認識として(5)「法律の規制がない化学物質に比べ,法律の規制がある化学物質をどのように考えますか」と有意な関係性を示す要因は確認されなかった.
【3】認識として(5)「法律の規制がない化学物質に比べ法律の規制がある化学物質をどのように考えますか?」 (危険・有害:1,安全・解らない:0) |
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単変量 | 多変量 | |||||||
オッズ比 | 95%信頼区間 | P値 | オッズ比 |
95%信頼 区間 |
P値 | |||
【1】基本属性 | (1) | あなたの性別をお答えください. | 0.67 | 0.46–0.96 | 0.028 | 0.74 | 0.51–1.08 | 0.113 |
(3) | 化学物質取り扱い経験年数 | 1.08 | 0.94–1.25 | 0.282 | 1.00 | 0.86–1.16 | 0.964 | |
(4) | あなたは,安全データシート(SDS)を見たことがありますか? | 1.67 | 1.21–2.29 | 0.002 | 1.14 | 0.58–1.34 | 0.548 | |
【4】職場教育・訓練 | (6) | 職場の先輩から,安全(危険性・有害性)について教育やアドバイスを受けたことがありますか? | 1.25 | 0.83–1.89 | 0.282 | 0.79 | 0.47–1.30 | 0.345 |
(7) | あなたは,あなたの職場の化学物質リスクアセスメントに参加していますか? | 1.32 | 1.00–1.74 | 0.054 | 0.99 | 0.69–1.41 | 0.947 | |
(8) |
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? 雇い入れ時の安全教育 |
1.11 | 0.82–1.50 | 0.486 | 0.85 | 0.61–1.20 | 0.363 | |
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? 危険予知活動(KY活動) |
1.45 | 1.09–1.93 | 0.010 | 1.17 | 0.83–1.66 | 0.379 | ||
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? 化学物質リスクアセスメント |
1.50 | 1.13–1.99 | 0.005 | 1.08 | 0.75–1.55 | 0.690 | ||
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? 先輩・同僚からの現場での教育 |
1.49 | 1.10–2.02 | 0.009 | 1.35 | 0.95–1.92 | 0.090 | ||
あなたが,効果的と考える危険性・有害性についての安全教育は何ですか? どれにもあてはまらない |
0.44 | 0.23–0.85 | 0.015 | 0.61 | 0.27–1.37 | 0.229 | ||
【5】知識 | (9) | あなたは,職場の化学物質リスクアセスメントの結果を知っていますか? | 1.43 | 1.09–1.89 | 0.011 | 0.95 | 0.65–1.40 | 0.800 |
(10) | 法律で規制されている化学物質と,規制されていない化学物質がある事を知っていますか? | 1.85 | 1.35–2.53 | <0.001 | 1.46 | 0.98–2.18 | 0.062 | |
(11) | あなたは,化学物質の法令を知っていますか?ここでの「化学物質の法令」とは,特定化学物質予防規則(特化則),有機溶剤中毒予防規則(有機則)のことを示します. | 1.72 | 1.29–2.29 | <0.001 | 1.34 | 0.911–1.974 | 0.137 | |
【6】化学物質に対する態度 | (12) | あなたは,厚生労働省のホームページ等で化学物質の情報を調べた事がありますか? | 0.78 | 0.59–1.04 | 0.086 | 1.12 | 0.790–1.58 | 0.531 |
本研究では,化学物質の取り扱い企業に勤務する従業員を対象としたWeb質問紙調査により,法規制による化学物質の危険性・有害性の認識へ影響する要因の特定を目的とした.化学物質を取り扱っている企業に勤務する従業員では,実際には化学物質を取り扱っていない者を含め,法規制のない化学物質より法規制のある化学物質の方を危険または「有害である」と認識している者の割合が多かった.一方,ロジスティック回帰分析では,法規制による化学物質に対する危険性・有害性の認識に影響する要因は,性別,法令で規制されている化学物質の存在の知識,化学物質を規定する特別規則の知識において有意な関係が認められた.なお,化学物質を取り扱っている者のデータを元に同様の解析を行ったところ,影響は確認されなかった.化学物質を取り扱っている者は,法規制の有無を問わず,化学物質は何らかの危険性を有しているとの認識をもっていることが影響している可能性がある.今後,自律的管理を推進する上で,法に規制されていることをもって危険または有害だと認識する傾向であることに注意を払うことが必要と考えられる.これに関しては,「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会の報告書」においても,「国のリスク評価により特定化学物質障害予防規則等への追加が決まると,当該物質の使用を止めて,危険性・有害性を十分確認・評価せずに規制対象外の物質を代替品として使用し,その結果,十分な対策が取られずに労働災害が発生している」とあることからも[3],法規制のない化学物質は有害性や危険性に対する措置が必要のない化学物質,すなわち,安全性が高い化学物質であると理解している可能性が推察される.
作業者の職場の教育・訓練を考える際には,教育・訓練の効果に影響する要因に配慮する必要がある.指導者の役割,訓練方法の違い,労働者の性格や態度(姿勢),知識,認識,職場の文化,雇用形態,あるいは具体的な課題を利用する方法や労働者の危険作業の拒否権利などが影響しているとされる[6–14].また,化学物質による労働災害を防止するためには,さらに労働災害の原因となる化学物質の危険性・有害性について国連GHS勧告に基づくSDSやラベルの理解,労働者の高等教育,労働者の知識や経験,あるいは教育方法としての爆発火災や化学物質との接触による健康障害を防止するための予防的なRAの理解,化学物質の管理のための法律の知識,そして職場での教育・訓練の経験などの影響を考慮する必要があるとされている[17, 18].本研究の結果からは,他の要因の影響を調整後も,法規制による化学物質の危険性および有害性の認識に影響を与える要因として,性別,法令で規制されている化学物質の存在の知識,および化学物質を規定する特別規則の知識であったことから,化学物質に関連した法令の情報提供の重要性が再確認された.
今回の調査では,統計的に有意な関連を示すような化学物質危険性・有害性を認識させる現場教育・訓練方法を見いだせなかったが,「職場の先輩から,安全(危険性・有害性)について教育やアドバイスを受けた」経験者は80%,さらに約70%の方が効果的な教育であると評価していることから,化学物質についても,他の作業同様,現場でのOn the Job training (OJT)教育が重要な教育の一つであることを示す結果が得られた.職場のRAの結果の認知については,「知らない」が約60%と高く,また,化学物質が法令で製造禁止にされているもの,ラベルの表示およびSDSの交付が義務になっているもの,SDS交付が義務となっていないものに分かれていることの知識についても,「知らない」と回答した調査協力者が半数を超えていることから,RAの結果の周知およびSDSに関する教育は継続的に実施することが必要であると考えられる.
ただし本研究では,質問紙調査であるため,法律の規制がない化学物質に比べ法律の規制がある化学物質を“安全”と回答した方の背景までを調べることはできなかった.本件に関しては,今後の課題として残された.
本研究は,従来の法規準拠型の化学物質管理から自律的化学物質管理に移行するに際し,法規制による化学物質についての危険性・有害性の認識への影響を調べることを目的とした.この点では,化学物質を取り扱う企業内の従業員の多くは化学物質の取り扱い如何に関わりなく,法規制のある化学物質を危険または有害と認識していた.一方,化学物質の取り扱い作業者は,法規制の有無を問わず,化学物質は何らかの危険性・有害性を有しているとの認識をもっている可能性を示す結果が得られた.化学物質取り扱い業務に入る前の就業前研修とともに,慣れに伴う不注意防止のための継続的な現場での危険性・有害性に重点を置いた教育・訓練が必要と考えられる.具体的な教育・訓練に関して,荒尾らは日本における塗装作業に従事する作業者を対象とする調査から,危険予知活動が有用であり,さらに就業前の少人数による実施が有用であることを示した[21].このことから,就業前の日常的な教育の積み重ねが重要であることが考えられる.
さらに,化学物質の自律的な管理の教育について,厚生労働省は,“雇入れ時等教育の拡充”や“職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種の拡大”による職場での全体的な安全衛生教育の強化と考えられる事項を求めている.さらに,“SDS等による通知方法の柔軟化”などの情報伝達の強化も求めている.このような情報のやり取りに関しては,職場で化学物質を取り扱う労働者だけではなく,事務手続き等を行うのみで直接的に化学物質を取り扱わない事務作業者も関わることが考えられる.そのため,会社全体の化学物質の危険性・有害性の教育などを行う必要があると考えられる.例えば,厚生労働省が行っている「全国労働衛生週間」などに全社の安全衛生教育等を行うことにより,社内の安全衛生意識の維持・向上につながると考えられる.
化学物質の取り扱い企業に勤務する従業員を対象としたweb質問紙調査により,法規制による化学物質の危険性・有害性の認識へ及ぼす着目すべき要因として,化学物質関連法令の知識が認められ,法令情報の共有の重要性が再確認された.
この研究は,2021年度,厚生労働省労働安全衛生総合研究事業(21JA0201)の助成金交付により研究が遂行されたものである.
該当しない
今回の研究のデータセットは,合理的な要求に応じて責任著者から入手できる.