2001 年 53 巻 1 号 p. 1-8
黄体期後半に起こる子宮内膜間質細胞の形態的·機能的分化は脱落膜化と呼ばれており, 着床やその後の胚の発育に重要であると考えられている. 不妊症や内分泌異常の治療に広く用いられている黄体補充療法は, 脱落膜化を中心とした黄体期の子宮内膜の分化をprogestogenが促進する作用を期待したものである. 現在, 各種の合成progestogenが臨床応用されているが, これらの作用の力価はこれまで, 動物におけるiv vivoの評価や, ヒトにおいては子宮内膜上皮細胞の分化の特徴によって評価されることが多く, ヒト子宮内膜間質細胞を分化させる作用に着目した報告はない. そこでわれわれは, ヒト子宮内膜間質細胞のin vitro培養系を用いて, 各種progestogenの脱落膜化誘起活性の違いを検討した.
5種類のprogestogen (progesterone (P), dydrogesterone, hydroxyprogesterone caproate (HPC), medroxyprogesterone acetate (MPA), chlormadinone acetate (CMA))を, 10-9, 10-8, 10-7, 10-6Mの4濃度として, それぞれE210-8Mとともに培養細胞に加え, 培養上清中のPRL濃度を指標として, 脱落膜化の程度を評価した. in vitroで脱落膜化した間質細胞のPRL産生量は, MPAとCMAで多く, HPC, P, dydrogesteroneではそれらに比べて少なかった. 細胞増殖の程度はPRL産生量と相関していた. ヒト子宮内膜間質細胞を用いたin vitro脱落膜化モデルは, progestogenの脱落膜化誘起活性の評価に有用と思われた.