産婦人科の進歩
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症例報告
子宮体癌と卵巣癌の重複癌の1例
井庭 貴浩井庭 裕美子板持 広明津崎 恒明
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2007 年 59 巻 1 号 p. 1-5

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抄録

 子宮体癌と卵巣癌との同時発生(重複癌)はまれである.子宮内膜と卵巣に同時に癌がみられた場合は,子宮体癌の卵巣転移,卵巣癌の子宮内膜転移あるいは両者の重複癌の可能性があり,診断に苦慮する場合も少なくない.さらに,転移性癌と重複癌では臨床的取り扱いやその予後が異なるため,これらの鑑別は一般臨床においてきわめて重要である.われわれは,子宮体癌と卵巣癌の重複癌と診断し得た1例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する.症例は40歳代,2経妊2経産の女性.不正性器出血を主訴に受診し,子宮内膜病理組織診断にて子宮体癌と診断した.子宮全摘術,両側付属器摘出術および骨盤内リンパ節郭清術を施行し,術後の病理学的検索により子宮体部と卵巣に高分化型類内膜腺癌を認めた.UlbrightらおよびReeらの診断基準に従い,子宮体癌と卵巣癌の重複癌であると診断した.いずれも初期癌であったため術後の追加治療は省略した.現在再発徴候はみられず経過良好である.重複癌と転移癌では治療法や予後が異なるため的確な診断が要求される.近年,重複癌の診断に分子生物学的解析を用いた報告がみられるようになってきた.今回の症例は初期癌であったため分子生物学的解析は行っていないが,今後重複癌の診断をより確実に行うためには必要となってくるであろうと考えられた.〔産婦の進歩59(1):1-5,2007(平成19年2月)〕

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© 2007 近畿産科婦人科学会
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