産婦人科の進歩
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症例報告
慢性高血圧症に降圧剤を使用し胎盤早期剥離-DIC後に腎障害が遷延した症例
岡本 敦子三好 剛一桂木 真司根木 玲子山中 薫梅川 孝小林 良成堀内 縁神谷 千津子井出 哲弥田吹 邦雄吉原 史樹中村 敏子吉松 淳
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キーワード: 高血圧, 降圧剤, 腎機能障害
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2013 年 65 巻 1 号 p. 69-74

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抄録

妊娠中の高血圧に対し,本邦で従来使用されてきたヒドララジン,メチルドパの内服薬に加えて,ニフェジピン(妊娠20週以降に限る),ラベタロールの2剤について妊娠中の使用が認可された.今回,加重型妊娠高血圧腎症に対し選択的α2アゴニストとカルシウム拮抗薬を使用して妊娠継続を図ったが,常位胎盤早期剥離を発症し術後腎障害が遷延した症例を経験したので報告する.症例は34歳,0経妊0経産.27歳時より高血圧を指摘されていたが,治療介入がないまま自然妊娠成立し前医で妊婦健診を受けていた.妊娠11週よりメチルドパ内服が開始され,妊娠34週にニフェジピンの内服が追加されたが,さらに血圧は上昇傾向であったため妊娠35週0日に前医に入院となった.妊娠35週2日に胎児機能不全にて当院に母体搬送となり,到着直後に常位胎盤早期剥離を発症して緊急帝王切開分娩となった.母体は分娩後,重症加重型妊娠高血圧腎症による高度の血管内皮障害,血管内脱水から急性腎不全を発症し,腎障害は術後長期間にわたり遷延した.妊娠高血圧症候群に対する降圧療法は対症的治療であり,血管内皮障害の改善には必ずしも役立たず,降圧剤を使用し妊娠を継続することで母体の臓器障害が進行する可能性があると考えられた.〔産婦の進歩65(1):69-74,2013(平成25年2月)〕

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© 2013 近畿産科婦人科学会
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