産婦人科の進歩
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症例報告
血液透析下にパクリタキセル・カルボプラチン療法を施行した慢性腎不全合併卵巣癌の1症例
福井 薫山口 博文串本 卓哉梅田 杏奈数見 久美子宮西 加寿也朴 康誠山本 敏也
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2013 年 65 巻 1 号 p. 90-94

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抄録

慢性腎不全維持透析中の卵巣癌患者に対し,パクリタキセルとカルボプラチン併用化学療法を行い,緩解を得た症例を経験したので報告する.症例は73歳,1回経妊,1回経産.61歳より慢性糸球体腎炎にて血液透析を施行している.下腹部痛の精査の結果,上行結腸~S状結腸,右付属器および肝臓に腫瘍を認め,CA125高値であったため,外科とともに開腹術施行.術後診断は卵巣癌IV期で,術後化学療法としてパクリタキセル・カルボプラチン療法を施行した.パクリタキセルは175mg/m2,カルボプラチンはGFR=0でCalvertの計算式を用いて125mg/body投与した.パクリタキセルを180分で点滴静注,カルボプラチンを30分で点滴静注し,その16時間後から血液透析を4時間施行した.カルボプラチン投与後より経時的に血中濃度を測定した結果,カルボプラチンの血液動態はfreeプラチナでCmax 8.18μg/ml,AUC 5.3mg・min/mlであった.治療開始後速やかにCA125の低下を認め,CT上も腫瘍病変の縮小が確認された.計12コースの化学療法を施行し,副作用としてはGrade3~4の白血球減少,Grade2の血小板減少を認めた.今後透析患者に化学療法を施行する機会が増えると予想されるが,透析患者にもパクリタキセルとカルボプラチンの併用療法は安全に施行できることが示された.〔産婦の進歩65(1):90-94,2013(平成25年2月)〕

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© 2013 近畿産科婦人科学会
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