産婦人科の進歩
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症例報告
総排泄腔遺残症に子宮頸部形成不全を伴った1症例
三谷 尚弘南 佐和子城 道久太田 菜美馬淵 泰士八木 重孝井箟 一彦
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2016 年 68 巻 2 号 p. 88-92

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抄録

総排泄腔遺残症は直腸,腟,尿路が分離されない先天性疾患で,子宮および尿路系にも多くの形態異常を合併する.出生2~5万に対して1例とまれな疾患であり,その病型もさまざまで,治療に難渋することも多い.今回,下腹部痛にて受診し,精査の結果,子宮頸部形成不全による子宮・卵管留血腫を合併した総排泄腔遺残症を経験した.症例は16歳の高校生で,12歳で初経を認め,数年前から増強する月経困難症を訴えていた.総排泄腔遺残およびそれに合併した尿路奇形(骨盤癒合腎,尿管異所開口等)のため,人工肛門造設術,その後の肛門形成術や左腎盂回腸膀胱新吻合術等多数の手術歴があった.CTにて左下腹部に嚢胞性病変を認め卵巣腫瘍疑いにて当科に紹介となった.MRIでは重複子宮を認め,左側子宮および卵管留血腫が疑われた.左側子宮頸管はMRIでは描出不能であり,左側子宮頸管形成不全による左側子宮および卵管留血腫と診断し開腹手術を施行した.左側子宮およびそれに続く嚢胞性病変を摘出し手術を終了した.病理組織結果から嚢胞壁は卵管と卵巣であり,結果的に左側の子宮と付属器を摘出したことになった.術後,月経周期は順調であり月経困難症は消失した.〔産婦の進歩68(2):88-92,2016(平成28年5月)〕

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© 2016 近畿産科婦人科学会
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