産婦人科の進歩
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症例報告
Klippel-Trenaunay-Weber症候群合併妊娠の1例
奥 幸樹谷村 憲司平久 進也前澤 陽子森實 真由美森本 規之出口 雅士山田 秀人
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2016 年 68 巻 2 号 p. 93-98

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抄録

Klippel-Trenaunay-Weber症候群(KTWS)はまれな疾患で,広範囲にわたる皮膚の血管奇形や血管腫,静脈瘤,軟部組織または骨の肥大を特徴とする.今回われわれは,KTWS合併妊娠を経験したので報告する.症例は23歳,1回経妊0回経産,自然流産1回.自然妊娠成立後,KTWS合併妊娠のため当科紹介受診となった.妊娠初期から低用量アスピリン内服とヘパリンカルシウム皮下注射による抗凝固療法を行った.妊娠27週に骨盤および脊椎MRIにより血管腫の評価を行い,分娩方法は帝王切開,麻酔方法は脊椎麻酔の方針としていた.しかし,妊娠35週に再度施行したMRIにより腰背部の皮下と脊椎付近に新たな血管腫の出現を認めたため,麻酔方法を全身麻酔の方針に切り替えた.全身麻酔の施行に際しては気管支内視鏡検査を施行し,挿管時に損傷する可能性のある血管腫がないことを確認した.妊娠37週2日に帝王切開術を施行した.術中に経腹超音波検査で腹壁内血管腫の位置を確認し,血管腫を傷つけることなく腹壁切開を行い,子宮表面の怒張した静脈叢を避け子宮切開を行った.産後6週間のヘパリンカルシウム皮下注射による抗凝固療法を行うことにより血栓症の発症は認めなかった.KTWS合併妊娠においては,妊娠中および分娩後の抗凝固療法による血栓予防,さらに,妊娠中の複数回の画像検査や気管支鏡検査による血管腫の評価により適切な分娩方法,帝王切開時の切開法,麻酔方法を選択することで安全に周産期管理することが可能であると考えられた.〔産婦の進歩68(2):93-98,2016(平成28年5月)〕

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