産婦人科の進歩
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原著
知的障害または発達障害を伴う女児および若年女性の月経異常等に関する検討
矢田(橋本) 奈美子甲村 弘子川口 晴菜清水 彰子光田 信明倉智 博久
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2017 年 69 巻 3 号 p. 245-252

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抄録

近年,小児期発症の慢性疾患を抱えた成人患者に対する医療について,小児科での継続診療か転科かといった「移行(transition)」が話題となることが多い.患者の多くは小児科で継続診療されているのが現状であるが,女児の場合は思春期以降,無月経や不正出血,月経不順など婦人科的問題が出てくることがあり,小児慢性疾患を背景にもつ患者の婦人科的診療の必要性は高いと考えられる.このような背景から,われわれは総合周産期母子センターにおいて平成9年より小児婦人科診療を行っている.婦人科診療を要した患者のうち,知的障害または発達障害を伴う患者は88例,中央値16.4 (9~34歳.基礎疾患は多発奇形・奇形症候群が15例(17%),てんかん,21trisomy等の染色体異常がそれぞれ12例(14%)ずつであり,知的障害の原因が不明なものは11例(13%),発達障害は6例であった.受診理由は月経周期異常が27例(31%),原発性無月経19例(22%),月経困難症13例(15%)などであり,82例(93%)が何らかの月経異常を訴えていた.月経異常に対する治療では13例が対症療法,34例が内分泌療法を要したが,薬物療法を要さないものも多かった.一方,4例が治療困難もしくは治療中止となっていた.知的障害または発達障害を伴う患者は増加傾向にあり,月経異常をきたしやすいとされる.しかし,月経時の対応が難しい場合もあることや,基礎疾患のため薬剤の選択に制限がある症例もあり,従来のホルモン療法が困難な場合があった.また1例ではあったが性虐待の症例もあり,注意が必要であるといえる.〔産婦の進歩69(3):245-252,2017(平成29年8月)〕

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© 2017 近畿産科婦人科学会
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