産婦人科の進歩
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症例報告
筋強直性ジストロフィー合併妊娠および顔面肩甲上腕型筋ジスロトフィー合併妊娠の2症例
脇本 裕澤井 英明亀井 秀剛森本 篤浮田 祐司脇本 剛田中 宏幸柴原 浩章
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2017 年 69 巻 3 号 p. 282-287

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抄録

筋ジストロフィーは筋線維の変性・壊死を主病変とし,進行性の筋力低下をもたらす遺伝性疾患である.われわれは異なる病型である筋強直性ジストロフィー(myotonic dystrophy;DM)および顔面肩甲上腕型筋ジスロトフィー(facioscapulohumeral muscular dystrophy;FSHD)の2症例の周産期管理を経験した.DM合併妊娠の症例は羊水過多で経過し,胎児機能不全を認めたため妊娠34週2日に帝王切開で児を娩出した.出生後,新生児は呼吸循環動態の増悪をきたし,日齢123日で死亡した.一方,FSHD合併妊娠の症例は子宮内胎児発育不全,羊水過少で経過した.妊娠39週1日,経腟分娩を試みたが分娩進行停止したため帝王切開で娩出した.新生児のFSHD罹患の有無は不明であるが,良好な状態で退院した.2症例とも切迫早産の治療において,リトドリン塩酸塩に比べ横紋筋融解症の発症リスクが低い塩酸イソクスプリンを投与した.横紋筋融解症の発症や原疾患の増悪を伴わずに妊娠管理することができ,FSHD合併妊娠の患者は生児を得たが,DM合併妊娠の児は乳児死亡した.〔産婦の進歩69(3):282-287,2017(平成29年8月)〕

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© 2017 近畿産科婦人科学会
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