産婦人科の進歩
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症例報告
右卵巣腫瘍を合併し,比較的早期に発見された虫垂由来腹膜偽粘液腫の1例
横田 浩美徳重 誠榮智 恵子矢野 阿壽加野溝 万吏堀 隆夫佐川 典正粟根 雅章
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2018 年 70 巻 1 号 p. 37-43

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抄録

腹膜偽粘液腫は腹膜播種した粘液産生腫瘍細胞が多量の粘液性腹水貯留をきたして死に至る予後不良の稀な疾患である.今回われわれは,血清CEA上昇を伴う右卵巣嚢腫に対して腹腔鏡下手術を開始して腹腔内を観察したところ,早期の腹膜偽粘液腫であった症例を経験した.症例は67歳の未経妊女性で,乳癌術後経過観察中,血清CEAが上昇(14.6ng/ml)したために行われたPET-CTで右卵巣嚢腫を指摘され,当科を受診した.経腟超音波とMRIで,右卵巣に悪性腫瘍所見に乏しい直径6cmの嚢胞と,ダグラス窩に少量の腹水を認めた.右付属器摘出術予定で腹腔鏡下手術を開始して腹腔内を観察したところ,右卵巣嚢胞と骨盤内のゼリー状粘液貯留を認め,腹膜偽粘液腫が強く疑われた.このため開腹手術に移行し,腹式単純子宮全摘出術,両側付属器摘出術,虫垂切除術,大網切除術および肉眼的に播種と考えられた骨盤腹膜上の結節性病変の切除を行い,腹腔内を温生食3000mlと5%ブドウ糖液500mlで洗浄した.術後病理組織診断は,虫垂の低悪性度粘液性腺腫由来の腹膜偽粘液腫と,それとは独立した右卵巣粘液性腺腫であった.大網に播種はなかった.本症例は偶然併存した卵巣腫瘍に対する腹腔鏡下手術施行の機会があり,早期発見と手術的完全切除につながった.今回の経験から,腹腔鏡下手術の診断的有用性が再認識された.〔産婦の進歩70(1):37-43,2018(平成30年2月)〕

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