産婦人科の進歩
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原著
当院で腹腔内化学療法を施行した卵巣癌症例の後方視的検討
下仲 慎平住友 理浩門元 辰樹酒井 美恵小原 勉鈴木 悠山ノ井 康二松村 謙臣
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2022 年 74 巻 3 号 p. 324-329

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抄録

卵巣癌は腹腔内臓器や腹膜への播種を伴うことが多く,化学療法を含め集学的治療が重要である.腹腔内病変の制御に対し腹腔内化学療法の有用性は示されてきたが,毒性やその手技の煩雑さから一般的な治療法とはなっていない.今回われわれは,2001-2015年までに当院で初回治療が開始された上皮性卵巣癌症例42例のうち,2期以上で腹腔内化学療法を施行した23例を対象として,後方視的に腹腔内化学療法の有効性を検討した.腹腔内化学療法について,カルボプラチンはCalvertの式でarea under the blood concentration-time curve 6となる量を基本量として腹腔内投与を,パクリタキセルは175[mg]/体表面積[m2]を基本量として経静脈投与を行っていた.手術および腹腔内化学療法を含めた初回治療終了時の治療効果は,パクリタキセルに対するアナフィラキシーショックで死亡した1例を除き,complete response(CR)17例(77%),partial response(PR)1例(5%),progression disease(PD)4例(18%)であった.CR17例のうち,7例は無再発生存,10例が再発した.10例の再発症例のうち腹腔内再発は5例,リンパ節再発または遠隔転移のみで腹腔内に再発を認めなかった症例は5例であった.3年progression free survival(PFS)は48%で,中央値は37カ月であった.副作用について,grade3以上の好中球減少が12例(52%),カテーテル閉塞が3例(13%),腹痛が3例(13%),前述のアナフィラキシーショックが1例(4%)認められた.本研究では,比較的良好なPFSや腹腔内病変の制御率を認めたものの,有害事象の点からは,今後腹腔内化学療法には非常に慎重な検討が必要である.〔産婦の進歩74(3):324-329,2022(令和4年8月)〕

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© 2022 近畿産科婦人科学会
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