産婦人科の進歩
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症例報告
腹腔鏡下手術既往のある肝臓子宮内膜症の1例
飯藤 宰士藤田 太輔古形 祐平寺田 信一田中 良道田中 智人恒遠 啓示山田 隆司大道 正英
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2022 年 74 巻 3 号 p. 351-359

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抄録

今回われわれは,手術を機会に腹腔内に播種したと考えられた肝臓子宮内膜症の1例を経験したので報告する.症例は42歳,未妊,前医で39歳時に両側卵巣子宮内膜症性囊胞に対して腹腔鏡下左付属摘出+右卵巣内膜症性囊胞摘出術を実施された後に経過観察されていた.また,手術に至るまでに上腹部の症状は認めず,手術時に腹腔内を観察されたが上腹部に異常所見は認めなかった.2年後,月経困難症の増悪とともに月経時の周期的な右上腹部痛が出現したため腹部骨盤造影MRI(magnetic resonance imaging)を撮影したところ,右上腹部痛に一致するように肝囊胞性病変を認めたため,GnRHアゴニスト(リュープリン3.75 mg)投与後にジエノゲスト内服で治療を開始した.GnRHアゴニスト(リュープリン3.75 mg)投与開始後撮影したMRIで病変の縮小を認め,右上腹部痛も軽減した.以上のことから肝臓子宮内膜症と考えられた.ジエノゲストを2カ月間内服後,月経困難症が増悪したため当院でGnRHアゴニスト(リュープリン3.75 mg)を追加投与後,手術に至った.術式は腹腔鏡下肝臓右葉部分切除+子宮全摘出+右付属器摘出術を実施した.術後経過も問題なく退院となった.術後の病理診断で右付属器周囲に異所性子宮内膜組織を認めたが,摘出した肝被膜囊胞からは異所性子宮内膜組織は認めなかった.GnRHアゴニスト(リュープリン3.75 mg)の治療が奏効したこと,右付属器周囲に異所性子宮内膜組織を認め,子宮内膜症既往手術歴があり,肝囊胞を開窓した際にチョコレート様の暗赤色の排液を認めたことより子宮内膜症が肝臓へ播種して発生した肝臓子宮内膜症と判断した.現在のところ更年期症状や再発症状も出現なく経過している.〔産婦の進歩74(3):351-359,2022(令和4年8月)〕

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