産婦人科の進歩
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症例報告
アセチルスピラマイシンで加療した妊娠梅毒の1例
山本 円西村 美咲西岡 香穂曽和 正憲西森 敬司
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2022 年 74 巻 3 号 p. 399-403

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抄録

今回われわれは,ペニシリン系抗菌薬により薬疹を発症したために,アセチルスピラマイシンで加療した妊娠梅毒の1例を経験したので報告する.症例は19歳,初産婦.自然妊娠成立し,当院を受診された.妊娠10週の妊娠初期検査でrapid plasma reagin test(RPR法)定性,treponema pallidum hemagglutination test(TPHA法)定性のいずれも陽性であった.妊娠12週の梅毒定量検査でRPR64倍,TPHA20,480倍と高値であり,症状はなく,潜伏梅毒と診断した.感染時期は不明であった.妊娠12週よりアモキシシリン1500 mg/日を処方したが,内服8日後に四肢に蕁麻疹を発症し,薬疹と診断し薬剤の変更を行った.妊娠15週よりアセチルスピラマイシン1200 mg/日を8週間投与した.内服後,RPR抗体価が治療前の1/4以下に低下したため治療効果ありと判定し,以降は経過観察を行った.妊娠41週0日に自然陣痛発来し,同日経腟分娩に至った.児は3644 gの男児,Apgar scoreは9/10点(1分値/5分値)であった.児の先天梅毒の感染は否定的であった.本症例ではアセチルスピラマイシンの投与により梅毒の母子感染を防ぐことができた.しかしアセチルスピラマイシン投与による妊娠梅毒の治療効果についてはエビデンスに乏しい.今後,ペニシリンアレルギー患者に対する妊娠梅毒の治療法確立のため,さらなる症例の蓄積と検討が必要であると考える.〔産婦の進歩74(3):399-403,2022(令和4年8月)〕

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