産婦人科の進歩
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症例報告
分娩進行中に前置血管が顕在化した1例
大和 奈津子窪田 詩乃金子 めぐみ荻野 美智松本 培世平久 進也船越 徹
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キーワード: 前置血管, 出生前診断
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2023 年 75 巻 1 号 p. 45-50

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抄録

前置血管は1万妊娠に2-6例発生するが,超音波断層装置の性能向上と普及に伴い,妊娠中期に93%が診断可能でlate pretermでの帝王切開が生児獲得率を高めるとされる.今回,子宮口全開大時に前置血管が顕在化したため緊急帝王切開を施行した症例と当院で過去に経験した5例を報告する.症例は35歳,3妊2産で自然妊娠し妊娠30週に胎児心奇形を疑われたため妊娠34週に当院を紹介受診した.胎児心エコーで三尖弁閉鎖Ic型と診断されたが,それ以外に異常を認めず,妊娠39週に社会的適応のため計画分娩を行った.メトロイリンテル留置前後の経腟超音波検査で異常を認めなかった.分娩第2期に入り臍帯因子によるCTG異常を認めたため施行した内診時に胎胞上に索状物を触知し,経腟超音波検査で児頭先進部より尾側の胎胞内面を走行する血流像を認め腟鏡診で血管様索状物を視認したため前置血管と診断した.緊急帝王切開にて2904 g女児,Apgar score 1分値6点/5分値9点で娩出した.胎盤所見は臍帯卵膜付着であり,臍帯付着部より臍帯動脈と臍帯静脈がおのおの約10 cmと約12 cm卵膜上を走行しており前置血管(type 1)であった.当院で経験した前置血管5例を含めいずれも臍帯付着部異常を認めたため,臍帯付着部未確認例は前置血管のリスク因子であると考える.さらに,本例のように初診時および入院時,そしてメトロイリンテル留置前後の経腟超音波検査で前置血管を認めていなくても,子宮口の開大とともに前置血管が顕在化する例も存在するため,臍帯因子によるCTG異常が認められる際は,とくに注意深い内診ならびに経腟超音波検査が重要である.〔産婦の進歩75巻(1):45-50,2023(令和5年2月)〕

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