1998 年 50 巻 4 号 p. 417-422
TSSは多臓器不全をきたす疾患である.今回われわれは,子宮筋腫術後にmethicillin resistantStaphylococcus aureus(MRSA)によるseptic shockをきたしたと思われる1例を経験した.患者は49歳で,子宮筋腫と診断され保存的治療がなされていた.腎孟腎炎のため近医(泌尿器科)に入院し,その後当科へ転院し子宮膣上部切断術を施行した.術前より発疹を認め,術後1日目には発熱,尿量減少,血圧低下,頻回の下痢を認めた.皮膚擦過物と糞便の培養検査結果からMRSA感染によるprobable toxic shock syndrome(probable TSS)およびMRSA腸炎と診断し,集中治療と同時に塩酸バンコマイシンの経静脈投与と経口投与により軽快した.TSSは早期診断と適切な抗菌剤の使用のもとでの集中的な全身管理が必要である.〔産婦の進歩50(4);417~422,1998(平成10年7月)〕