抄録
急性期の一般病棟では,終末期のがん患者ばかりではなく,重症患者や周手術期の患者の検査・治療という診療の補助や日常生活の援助において,看取りを経験することもしばしばである.そのような状況の中,病院で最期を迎える患者および家族に対して,本人と家族が納得したうえで後悔のない最期を迎えるための終末期支援が求められている.本研究の目的は,我が国の急性期看護における終末期ケアの現状と課題を,先行研究により明らかにすることである.「医学中央雑誌Web版により,「急性期」,「終末期orターミナル 」,「看取り」のキーワードで,2009年から2020年の10年間に発表された原著論文をもとに検索し,除外基準により選定した結果,22件が抽出された.内容分析の結果,急性期病棟における終末期ケアでは,「スピリチュアルペインには明確に意識を向けていない」「トータルペインの視点からは疼痛管理をしているとは言えない」現状があった.
急性期病棟という重症者の対応や緊急性の高いケアを優先させなければならない多忙な日常の業務の中で,終末期患者とじっくり関わって患者及び家族が納得のいく最期を迎えるための意思決定への支援の難しさが明確となった.また様々な制限がある多忙な業務の中で,適切な終末期ケアができているが自信が持てないでいることが明らかとなった.終末期患者の情報について共有したり話し合えるような終末期ケアカンファレンス等を定期的に持てるような場づくりや,看護師が実践に結び付けて行けるように,終末期がん患者へのケアについての十分な知識ならびに技術の習得の機会を設ける等の教育環境を整えていく必要性が示唆された.