抄録
支援を必要としながらもそれを求めない学生が存在することは,大学での学生支援に
おける重要な課題である。本研究は,アタッチメント・スタイルと社会的居場所感の観点か
ら,支援要請の意思との関連を探ることで,学生支援におけるより効果的なアプローチの検
討に寄与することを目指した。大学生 162 名を対象に,アダルト・アタッチメント・スタイ
ル尺度(ECR-RS),居場所感尺度を用いて調査を行った。支援要請意思については,大学
内の教職員によって行われる主要な支援場面を想定した項目を作成し,必要時に支援要請
の意思があるかどうかを 7 段階で評定させた。その結果,ECR-RS,居場所感尺度の各因子
の尺度得点と,因子分析を経て算出された支援要請意思項目の尺度得点の間に相関関係は
ほぼ示されなかった。一方,ECR-RS と居場所感尺度の各因子の尺度得点間には,やや相関
関係が示された。ひとつの解釈として,社会的居場所感が,アタッチメント・スタイルと支
援要請意思を媒介している可能性を論じた。また,ソーシャル・サポートの観点から,社会
的居場所感が高ければ支援要請意思を高める一方で,同時に友人への支援要請意思も高め,
その結果として教職員に対する支援要請意思が低下する可能性も論じた。