抄録
大規模堆肥化処理方式の違いが牛ふん尿堆肥の腐植化に及ぼす影響を調べるために,堆積方式と撹拌方式により製造された堆肥から抽出された腐植物質の化学的および光学的特性を比較した。いずれの方式についても,堆肥化に伴うC/N 比や易分解有機物量の減少,幼植物発芽試験における腐熟化の進行が認められた。一方,処理方式により,堆肥から抽出された腐植酸の光学的特性が著しく異なり,堆積方式では腐植酸の黒色化とカルボキシル基などの官能基構造の発達を伴う腐植化の進行が顕著であったのに対し,撹拌方式では堆肥化後も未熟でリグニン構造が残存した腐植酸であった。植物の生育に影響を及ぼす可能性がある動的な腐植物質を水抽出して比較したところ,堆積方式ではフルボ酸の増加と腐植化に伴う構造変化が認められたが,撹拌方式ではフルボ酸が減少した。処理方式が異なる堆肥の圃場還元においては,腐植化の違いを考慮した使い分けが必要である。