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豚肥育期における低リジン飼料給与が発育成績,筋肉内脂肪含量,筋肉のアミノ酸組成等に及ぼす影響
野口 剛 宮部 真理子
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2012 年 42 巻 4 号 p. 162-170

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抄録
46 頭の肉豚を用い,肥育期においてリジン含量が養分要求量に満たない肥育期用飼料を給与し,発育成績および枝肉から採取したロース部の筋肉内脂肪含量,筋肉中のアミノ酸組成への影響等を検討した。試験は2 区とし,対照区は飼料中の蛋白質,リジン含量がそれぞれ14.9%,0.75%,試験区がそれぞれ14.1%,0.52%とした。発育試験は生体重65kgから開始し,110 kg を終了とした。 試験の結果,日増体量,飼料要求量は対照区に比べ低リジン給与が劣る傾向が認められた。ロース断面積は対照区に比べ低リジン給与が有意に小さくなった。肉色は対照区に比べ低リジン給与が淡くなる傾向が認められた。ロース部の筋肉内脂肪含量は対照区に比べ低リジン給与が有意に高くなった。特に,ロース部を4 分割して調査した筋肉内脂肪は腰部における蓄積が高くなっていた。18 種類の構成アミノ酸において,低リジン給与が対照区よりアミノ酸の割合が約10%減少し,区間において有意な差が認められた。総遊離アミノ酸のうち,アスパラギン酸,トレオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,トリプトファン,リジン,アルギニンにおいて,低リジン給与が対照区より低下し,有意な差が認められた。背脂肪内層のパルミチン酸,ステアリン酸において,低リジン給与が対照区より有意に増加し,リノール酸において対照区が低リジン給与より有意に減少した。以上のことから,肥育期において日本飼養標準の養分要求量のなかで,リジン水準のみが要求量以下になると,ロース部の筋肉内脂肪含量の蓄積を促進するが,日増体量が低下し,さらに筋肉を構成するアミノ酸組成の蓄積が抑制され,畜産物の品質に影響すること等が明らかになった。
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