抄録
生産量の増加が見込まれるナタネについて,選別残渣など低品質粒の利用方法の多様化の一環として無変換ナタネ油の燃料利用を検討した。市販の改造キットを小型ディーゼル発電機に取付け,ナタネ油供試にて1 250時間,比較試験のための軽油供試にて250時間の合計1 500時間の運転試験を行い,以下の知見を得た。エンジンオイル分析によるとエンジンへの重大なダメージは認められず,運転状態にも異常は認められなかった。ナタネ油供試運転時にエンジンの不調が発生したが,フィルタ類の整備不良によると考えられた。自家生産のナタネ油は,工業製品である軽油よりも塵や水分が混入しやすいと推察され,フィルタ類の整備の重要性が高いと考えられる。不調対応のために整備技能の習熟とともにトラブル発生にも留意した利用が必要である。ナタネ油供試時の燃料消費量(L/h)は軽油供試時より,一定負荷で6~13%,変動負荷で8%程度多かった。燃料の発熱量がナタネ油の方が少ないためと考えられる。エンジンオイル中のすす量はナタネ油の方が少なかった。1250時間の発電機利用時間は,試算例として栽培面積2 ha分のナタネの乾燥から精油までの電源利用を想定すると農業用設備の法定耐用年数7年とほぼ同等である。