農業施設
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冬季夜間の下向き赤外放射量が農業用被覆資材の熱貫流係数に与える影響
大橋 雄太 土屋 遼太石井 雅久林 真紀夫
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2023 年 54 巻 3 号 p. 57-69

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抄録
近年利用されている農業用被覆資材(ガラス,農業用ポリオレフィン系フィルム(農 PO),フッ素樹脂フィルム,農業用塩化ビニルフィルム(農ビ),農業用エチレン酢酸ビニル共重合フィルム(農サクビ)および農業用ポリエチレンフィルム(農ポリ))について,冬季夜間の気象条件を模した天空からの下向き赤外放射量(212~297 W m-2)を実験装置内で再現し,各条件下における熱貫流係数を算出した。以下,天空からの下向き赤外放射のことを天空放射と呼ぶこととする。本研究の天空放射条件下で熱貫流係数の範囲はガラスで5.2~5.7 W m-2-1,農 PO で5.5~6.4 W m-2-1,フッ素樹脂フィルムで5.6~6.4 W m-2-1,農ビで6.0~6.9 W m-2-1,農サクビで6.7~7.6 W m-2-1,農ポリで6.7~7.6 W m-2-1 であった。また,天空放射量が小さいほど,熱貫流係数は増加する傾向を確認でき,各資材において,天空放射量と熱貫流係数の関係を直線で近似可能であった。よって,作成した天空放射量と熱貫流係数の関係を示す近似式を,温室の熱貫流量の計算に用いることで,天空放射条件を考慮した暖房負荷の算出が可能である。加えて,供試した各資材の長波放射吸収率もしくは透過率と各天空放射条件下における熱貫流係数を2次関数で近似することが可能であった。したがって,保温性能が未知である被覆資材について,長波放射吸収率や透過率を測定することで,異なる天空放射条件下の熱貫流係数を簡易的に推定することが可能となった。
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