抄録
本研究は, 開放型牛舎における搾乳牛の行動と温熱および空気衛生環境の関係を明らかにすることを目的として, 北海道千歳市近郊にある牛舎一棟について調査を行った。この地域の冬季には積雪量が比較的大きく, 気温は-10℃以下になることが度々ある。一方, 夏季にはまれに30℃を越えることがある。現地調査では, 24時間調査および早朝調査を実施した。24時間調査は冬季と夏季にそれぞれ一回ずつ実施した。早朝調査は冬季 (1997年12月-1998年2月) および夏季 (1998年5-7月) にそれぞれ4回ずつ実施した。調査結果から下記の結論が導かれた。
1. 飼料とストールおよびパドックのいずれを牛が選択するかは季節によって異なった。冬季においては, 給餌時でもストールに留まることを選択する牛が多かった。また冬季には, パドックとストールをほぼ同程度選択したが, 夏季には採食後すぐにストールを選択した。
2. 早朝調査のデーターを重回帰分析し次の結果を得た。冬季調査における牛の選択場所の変動 (採食エリヤとストールおよびパドックにいた牛頭数変動) の60から70%を説明変数「給餌からの時間」,「舎内温度」,「日射強度」,「風速の方向成分」によって説明できた。一方, 夏季調査においては, 説明変数「給餌からの時間」と「日射強度」のみによって採食エリヤとストールにいた牛頭数変動の90%以上を説明できた。
3. 開放型畜舎内の空気衛生環境をより良く理解をするためには, 家畜行動の影響も含めてさまざまな換気条件下における浮遊細菌濃度の変動に関する研究が必要である。