農業施設
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34 巻, 2 号
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  • プロセス構成が酸生成過程に与える影響
    蒋 偉忠, 北村 豊, 石束 宣明, 椎名 威仁
    2003 年34 巻2 号 p. 91-100
    発行日: 2003/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    有機酸 (VA) 生成や有機物 (VS) の分解および粒径分布といったパラメータを用いて, 滞留時間 (HRT) 20日の中温発酵を行う回転ドラム型発酵システムの酸生成特性に与えるプロセス構成の影響を評価した。実験では生の大豆粕すなわちおからを基質として用いながら, カスケードプロセスと固形物返送プロセスについて, その酸生成特性を検証した。カスケードプロセスについて得られた見かけの加水分解定数は, pH4.5~4.6の定常状態で9.0×10-3/dであり, 前報の結果 (7.2×10-3/d) よりも大きかったのに対して, 固形物返送プロセスについて得られた加水分解定数はpH4.4で5.0×10-3/dであり, これは前報の値よりも小さかった。両プロセスのみかけのVS除去率と総VA (酢酸基準) はそれぞれ9.6~16.5%, 10.8~16.7g/Lの範囲にあった。総VAに占める電離VAの比率は, 固体返送プロセスで27.5~30.8%への増加があったのに対して, カスケードプロセスでは35.5%への増加があり, また酢酸の総VAに占める割合はカスケードプロセスで86.0~94.3%, 固形物返送プロセスで86.0~93.3%であった。ここで得られたVSの粒径分布特性は, 粉砕用ボールのリアクタへの投入が粗大固形物の機械的な粉砕に効果的であると認められたものの, 可溶性固形物の顕著な生成を促進するには至らなかったことを示唆した。
  • 蓑輪 雅好
    2003 年34 巻2 号 p. 101-112
    発行日: 2003/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    立位豚の向きが時々刻々と変化するときの矩形面に対する豚体の形態係数を解明するために, 豚がその場で向きを1回転したときの矩形面に対する形態係数の平均値を全方位形態係数と呼称し, 27kg豚, 65kg豚および88kg豚のサーフェスモデル (体表面が多数の三角形パッチで覆われた3次元多面体グラフィックスモデル) を用いて, 壁面に位置する矩形面 (単に壁面と呼称する), 天井面に位置する矩形面 (天井面), 豚の蹄部底面が接触している矩形面 (床面) および蹄部底面よりも下方に位置する矩形面 (下方床面) に対する豚体の全方位形態係数を数値計算で求めた。
    形態係数総和則と誤差伝播法則から, 豚体の全方位形態係数計算値の誤差率は1%以下であり, 計算値は有効数字が少なくとも3桁である精度を有していると推定できた。
    豚体中心 (豚体の全長, 最大幅, 最大高さそれぞれの中点) から1m以上離れた壁面, 0.5m以上離れた天井面および1m以上離れた下方床面に対する27kg豚, 65kg豚, 88kg豚の全方位形態係数は, これら3種類の豚における平均値 (全方位形態係数平均値) で代表できることが明らかになった。また, 豚体中心から1.5m以上離れた壁面と0.5m以上離れた天井面に対する豚体の全方位形態係数平均値は, 矩形面に対する微小球の形態係数を表す式で算定できることを示した。さらに, 豚体中心から1m以上離れ, 豚体中心から床面までに位置する壁面に対する27kg豚, 65kg豚, 88kg豚の全方位形態係数にも, 矩形面に対する微小球の形態係数算定式は適用可能であった。
    微小球の形態係数算定式が適用できない壁面, 床面および下方床面に対する豚体の全方位形態係数や全方位形態係数平均値については, 豚体中心から矩形面までの距離と矩形面の大きさを変数とした算定図を提示した。
  • 高井 久光, 森田 茂, 干場 信司
    2003 年34 巻2 号 p. 113-126
    発行日: 2003/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    本研究は, 開放型牛舎における搾乳牛の行動と温熱および空気衛生環境の関係を明らかにすることを目的として, 北海道千歳市近郊にある牛舎一棟について調査を行った。この地域の冬季には積雪量が比較的大きく, 気温は-10℃以下になることが度々ある。一方, 夏季にはまれに30℃を越えることがある。現地調査では, 24時間調査および早朝調査を実施した。24時間調査は冬季と夏季にそれぞれ一回ずつ実施した。早朝調査は冬季 (1997年12月-1998年2月) および夏季 (1998年5-7月) にそれぞれ4回ずつ実施した。調査結果から下記の結論が導かれた。
    1. 飼料とストールおよびパドックのいずれを牛が選択するかは季節によって異なった。冬季においては, 給餌時でもストールに留まることを選択する牛が多かった。また冬季には, パドックとストールをほぼ同程度選択したが, 夏季には採食後すぐにストールを選択した。
    2. 早朝調査のデーターを重回帰分析し次の結果を得た。冬季調査における牛の選択場所の変動 (採食エリヤとストールおよびパドックにいた牛頭数変動) の60から70%を説明変数「給餌からの時間」,「舎内温度」,「日射強度」,「風速の方向成分」によって説明できた。一方, 夏季調査においては, 説明変数「給餌からの時間」と「日射強度」のみによって採食エリヤとストールにいた牛頭数変動の90%以上を説明できた。
    3. 開放型畜舎内の空気衛生環境をより良く理解をするためには, 家畜行動の影響も含めてさまざまな換気条件下における浮遊細菌濃度の変動に関する研究が必要である。
  • 〓 桂玲, 西尾 道徳, 前川 孝昭
    2003 年34 巻2 号 p. 127-133
    発行日: 2003/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    豚, 家禽などの単胃動物の餌に添加する無機リン量を削減するために, 植物または微生物由来のフィターゼを添加して, 飼料中のフィチン態リンを無機化させる技術が今後普及すると予想される。しがしながら, この技術が普及すると, 豚や家禽のふん尿堆肥中の無機リン含量は著しく低くなり, 作物の養分源としての価値を大きく低下させると推定される。そこで, 動物体内で分解されなかったフィチン態リンの無機化を堆肥化過程で促進させることが重要になろう。本研究では, 飼料に添加したフィターゼが排泄された後にも, ふんに残ったフィチン態リンをどの程度分解し続け得るのかを検討した。
    フィターゼ添加と無添加の飼料で飼養した豚のふんを室内に40日間放置し, フィターゼ活性を測定した。排泄されたふん中のフィターゼの活性は, 豚ぷんの放置に伴い, 0日目の1,070U/kgから40日目の45U/kgへと直線的に減衰した。この間にフィチン態リンの約半分 (1.26mgP/gふん乾物) が分解された。そして, 40日目以降においては排泄されたフィターゼによるふん中のフィチン態リンのさらなる分解は期待できないことが判明した。
  • アザド モハメド アブル カラム, 石川 勝美
    2003 年34 巻2 号 p. 135-142
    発行日: 2003/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    グリーンハウスにおいて良質原水の確保や環境保全が重要な課題となっている。本研究では, 珪酸塩鉱物の中でとくに成形性, 焼結性に優れた天然原料を用い, 焼成温度1200℃で焼成し, 表面に電荷を有する直径0.8mmの粒状セラミックスを開発した。本セラミックスを水中で流動させる水処理装置により, セラミックスの有する表面電荷を活用して水の浄化能の改善を図り, 種苗等の生産の向上に資することを目的としたものである。実験の結果, カオリン粒子が各濃度の凝集剤 (ポリ塩化アルミニウム; PAC) に対してフロックを形成しやすくなり, 凝集効果が高められた。また界面活性は増加した。さらに塩素の揮発速度は緩やかであり, 塩素の効率的利用に寄与した。またメロン種子を供試して種苗工場での初期生育比較の結果, セラミックス処理区の生育は対照区に比べ向上した。以上のことから, 粒状セラミックスの流動処理方式は水質改善に寄与することがわかった。
  • 猫本 健司, 干場 信司, 河上 博美, 森田 茂, 池口 厚男
    2003 年34 巻2 号 p. 143-149
    発行日: 2003/09/25
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    畜産における環境問題の発生を少なくするために, 様々な糞尿処理システムが導入されている。本来, 糞尿処理の目的は農業の自然循環機能を生かすことであるが, 近年の糞尿処理システムの中には, 窒素化合物を少なからず大気中へ放出させたり, 多量のエネルギーを要する場合もある。このため, 糞尿処理システムの評価には, 環境調和的視点を加味した総合的な指標が必要であると考えられる。そこで本研究では3つの複合的指標からなる2つの評価式; [投エネ/所得] 比と [窒素負荷/所得] 比を用いて, 異なる糞尿処理方式をもつ北海道の3酪農場における酪農経営全体と糞尿処理システムに関する評価を試みた。なお,「投エネ」とは「投入化石エネルギー」の略である。
    A酪農場 (国営肥培かんがいシステム) とB酪農場 (ハウス乾燥撹拌処理システム) およびC酪農場 (慣行的な堆肥処理システム) の糞尿処理システムにおける [投エネ (糞尿処理)/所得] 比はそれぞれ65, 17, 13 [MJ/1,000yen] であり, [窒素負荷 (糞尿処理)/所得] 比はそれぞれ0.07, 0.32, 0.06 [kgN/1,000yen] であった。結果的には比較的新しい糞尿処理システムを採用するAやB酪農場よりも,昔ながらの慣行的な処理を行っているC酪農場の糞尿処理システムの方が, 所得あたりの環境負荷は小さかった。このことから, 新たな糞尿処理システムにより労力が削減され処理効率が向上したからといって, 必ずしも環境負荷が抑制されているわけではないことが, 複合的指標による評価によって指摘できる。
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