生物物理化学
Online ISSN : 1349-9785
Print ISSN : 0031-9082
ISSN-L : 0031-9082
電氣泳動法による血清蛋白質の研究
小川 新吉近 新五郎浦田 卓木村 武
著者情報
ジャーナル フリー

1951 年 1 巻 1 号 p. 15-22

詳細
抄録

1) 正常人血清を1/20m燐酸緩衝液で透析し,透析前後に於ける試料の變化,泳動時間によるPatternの變化及び試料蛋白濃度の増減に伴うPatternの變化に就て實驗し次の如き諸事實を確認した。
2) 透析後の試料蛋白濃度を2.2~1.5g/dlにするには透析前の蛋白濃度を2.2~1.7g/dlとすればよい。
3) 透析前の試料の量を12cc前後にすれば透析後の試料の量は何れも増加するが,原血清の増量は最も大きく,3~7倍稀釋で2.5~2.0ccであつた。
4) 3~4倍稀釋の透析後試料の蛋白濃度を日立蛋白計で測定した値は±0.2g/dlの誤差範圍でキィルダール値と一致した。從つてこの稀釋濃度のものなら日立蛋白計を簡易蛋白測定法として使用し得る。
5) γ-gl.の分離は最も遲いが泳動後60分までには完全に分離する。
6) γ-gl.の相對的易動度は泳動に伴い減少するが90分以後は安定する。その他の分屑の相對的易動度は泳動時間の相違によつて大きな變化を示さない。
7) 峰の高さ及び底邊の長さの變化と泳動時間との間には一定の關係を認め難い。
8) 各分屑の面積及び面積比はα-gl.が分離してから後は泳動時間によつて有意義な差違を示さない。α-gl.は主にAlb.より,時に一部β-gl.より分離されるように思われる。γ-gl.,特に上昇側のものは最初の90分まで減少する傾向が認められる。
9) 試料蛋白濃度の大小によつてPatternの基本型は變化しない。
10) 試料蛋白濃度の大小によつて各分屑の相對的易動度にも大きな變化は認められない。
11) β-disturbanceは必ずしもFibrinの析出,對流に關係があるとは決定出來ない事實を確認した。
12) 各分屑の左右非對稱性は泳動時の恒温槽温度及び使用緩衝液のイオン強度と密接な關係のあることを知つた。
13) 3倍稀釋を中心として,それより稀釋倍數が多い場合も少ない場合もAlb.の面積比は3倍稀釋の場合より高くγ-gl.はより低く出る。
14) β-anomalyの面積は原血清を除いて,大體試料蛋白濃度の大小と比例して増減する。

著者関連情報
© 日本電気泳動学会
前の記事 次の記事
feedback
Top