日本化粧品技術者会誌
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特集総説 健やかな毛髪を保つ最新のヘアケア技術①
毛髪ケラチン繊維の力学物性を制御する階層構造
新井 幸三
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2015 年 49 巻 1 号 p. 2-15

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抄録

毛髪の構造と力学物性の相互関係を理解するためには, 各階層における構造と物性との関係に留まらず, 各階層間の相互作用により発現される物性として捉える必要がある。本論文は, (1)毛髪コルテックスにおける中間径フィラメント(IF)タンパク質の構造, (2)ジスルフィド結合により架橋されたIFタンパク質とマトリックスタンパク質(KAP)の網目構造, および(3)チオグリコール酸で還元処理されたパーマネント毛髪中のミックスジスルフィド基濃度に及ぼす水洗時間の影響の3節から構成されている。第1節では, 力学物性を制御するコルテックスのIFタンパク質の構造モデルが, 4量体逆平行分子モデルと4量体平行鎖モデルに分類されることを説明した。後者は, へリックス分子のペプチド双極子から生じる圧電効果に基づいて最近提出されたモデルである。力学特性はIFの構造に深く関係するのみならず, コルテックスのIFやKAP成分の網目構造に関係する。第2節では, ケラチンコルテックスのSS架橋の数, 様式, および位置を解析する力学的方法とこれまで得られた結果をいくつかの図を使って詳細に説明した。最終節では, パーマ毛髪のSS架橋の網目構造が示された。この構造は膨潤処理した毛髪繊維にゴム弾性理論を適用して決定された。還元後の水洗処理過程におけるSS架橋の再生機構が, コルテックスのSS結合に対して得られた種々の構造パラメータの値に基づいて厳密に議論された。SS架橋の再生に随伴して生じるミックスジスルフィド基の減少は, 平衡系から拡散によって還元分子種が除かれて誘発される還元反応の逆反応によるという重要な結論が導かれた。

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