日本化粧品技術者会誌
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最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 豊田 直晃, 澤田 均, 山本 勝宏
    2024 年 58 巻 2 号 p. 129-138
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    ポリエチレングリコール (PEG) 変性シリコーンは, 油中水型 (W/O) 乳化の界面活性剤として汎用されるが, 一般に高温保存における乳化安定性が低いとされている。これは, 高温においてPEGが脱水和され疎水的となり, 油水界面から脱離することに起因すると考えられる。一方, シクロデキストリン (CD) は, 疎水的な内部空孔を有する水溶性の環状化合物であり, 一般に低分子物質の包接挙動がしられている。われわれは, HLB 4.5のPEG変性シリコーン (PEG-MS) とα-CDとを併用したW/O乳化系において, 高温保存における顕著な乳化安定化効果を見出した。本研究では, 動的粘弾性測定, 熱分析, および両親媒性スピンプローブを用いた界面膜粘性測定等により, 乳化安定化メカニズムを調査した。その結果, PEG-MSとα-CDが疎水性相互作用を駆動力とした超分子複合体を形成することが示され, これが油水界面に効率的に配向することで乳化安定性の向上に寄与するものと考えられた。本技術によれば, 感触に影響を及ぼす界面活性剤, および油相増粘剤の配合量を最小限に抑えることができ, 乳化安定性と良好な感触特性を両立したW/O製剤を創出することができると考えられる。

  • Naomi Saito
    2024 年 58 巻 2 号 p. 139-150
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    Prolonged ultraviolet (UV) exposure causes skin photoaging with clinical features of wrinkles, loss of elasticity, and roughness. Histologically, photoaging is characterized by the accumulation of abnormally disorganized elastic fibers in the upper dermis, and various post-translational modifications are assumed to be associated with this process. Protein tyrosine nitration, which is mediated by reactive nitrogen species formed by nitric oxide and superoxide, is one of the post-translational modifications that has increasingly been recognized as a functionally significant protein modification. This study aimed to investigate the involvement of protein nitration in abnormal elastin accumulation and skin photoaging. Immunohistochemical staining of skin sections from elderly women revealed that abnormally accumulated elastin in the photoaged dermis (cheek) was more strongly colocalized with nitrotyrosine than elastin in the chronologically aged dermis (buttock). Moreover, an immunoprecipitation assay showed that dermal fibroblasts exposed to UV-A induced tyrosine nitration of elastin. Experimental nitration of elastin fibers altered the physical properties of elastin, with the formation of large multimeric assemblies of human recombinant tropoelastin and curled and aggregated bundles of elastin fibers, resulting in enhanced stiffness and decreased elasticity of elastin. In addition, nitrated elastin showed resistance to degradation by elastase secreted by neutrophils and fibroblasts. Furthermore, the nitrotyrosine-reducing agent, clove extract, inhibited peroxynitrite-induced elastin aggregation and improved human skin elasticity. These results suggest that elastin nitration caused by UV exposure leads to abnormal elastin accumulation, which alters the mechanical properties of the skin and results in the progression of photoaging. Therefore, this study proposes nitration as a potential novel target for preventing skin photoaging.

  • 福田 康二, 阪本 聡, 丸山 勝弘, 久恒 幸也, 濱田 和彦, 鍋倉 三世子, 片桐 一元
    2024 年 58 巻 2 号 p. 151-162
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究では, 更年期症状と関連性の強い肌症状を特定するために, 更年期症状の重症度 (簡略更年期指数:SMI) と肌悩みの相関性をアンケート調査した。その結果, 角質異常との関係が推測される肌症状とSMI値に相関があった。さらに, 高SMI値群と低SMI値群に分けて肌測定を行ったところ, 高SMI値群において経表皮水分蒸散量が増加し, 更年期の肌症状の一因はバリア機能の低下であることが示唆された。そこで, われわれは更年期の肌症状を改善する新たな手段として, ヒアルロン酸フラグメントに着目し, 有用性の検証を行った。培養ケラチノサイトへの作用では, 高分子のヒアルロン酸 (平均分子量180〜220万) は細胞分化促進, 低分子のヒアルロン酸 (平均分子量1万以下) は細胞増殖促進作用を有したが, ヒアルロン酸フラグメント (平均分子量5〜11万) は増殖および分化を促進した。更年期症状を呈する被験者に外用したところ, 高SMI値群では経表皮水分蒸散量の低下, 角質水分量の増加が認められ, さらにアンケート調査でも肌症状の明らかな改善が認められた。以上より, ヒアルロン酸フラグメントは更年期の肌症状の改善に有用であることが示唆された。

  • 上條 洋士, 富田 瑛智, 渕上 幾太郎, 原田 佳祐, 戸田 貴裕, 森川 和則
    2024 年 58 巻 2 号 p. 163-174
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    ヘアセットやメイクアップは人の印象を変える重要な要因の1つと考えられているが, 多くの人からは印象を変えるためには髪よりメイクのほうが重要と認識されている。しかしヘアセットとメイクアップで人の印象に与える影響を比較した報告はない。本研究では, ヘアセットとメイクアップが印象に与える効果について6語の評定語を対象とした実験を行い, 分散分析, 重回帰分析を用いて分析した。その結果, ヘアセットおよびメイクアップのどちらもすべての評定語に与える影響は強く, とくに清潔感においてはメイクアップに比べるとヘアセットのほうが重回帰分析の偏回帰係数が2倍近く大きいことが示され, メイクアップよりもヘアセットのほうが清潔感の印象に及ぼす影響力が強いと考えられる。また一部の評定語についてはヘアセットあるいはメイクアップと性別との間に交互作用が得られ, 男女間でヘアセットやメイクアップにより印象が変化する程度に差があることが明らかになった。さらにヘアセットとメイクアップのそれぞれが得意とする評定語を分類し, 印象変化特性を特定した。髪が印象へ及ぼす影響力を明確にしたことで, 髪がもつ影響力のさらなる可能性の探索や消費者へのより効果的な提案へ応用できると期待される。

短報
  • 高嶋 快土, 中川 淳史
    2024 年 58 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    パーマスタイルに魅力を感じる人は多く存在するが, パーマ施術は失敗しても元の状態には戻せないうえ, 髪や頭皮にダメージが及ぶことからも, 人々にとっては抵抗感のある行為でもある。われわれは, パーマ処理無しでパーマスタイルを実現するため, 毛束を形成する粘着性と毛髪を針金のように自由に成形してカールした状態で固定できる性質を併せ持ち, さらに毛髪に均一に塗布することが可能な整髪剤の開発を行った。その結果, ロウ類を配合した泡沫状エアゾール製剤にすることで, パーマ処理なしでパーマスタイルが実現可能となった。本製剤の整髪メカニズム検証の結果, 本製剤は粘着性, および均一な塗布性を有するが, 毛髪を固める性質は無いことがわかった。そこで, 本製剤で処理した毛髪表面を顕微鏡観察したところ, 微細な凹凸構造の形成が確認された。さらに毛髪の櫛通り試験の結果, 本製剤には毛髪同士を強く引っ掛ける性質があることが明らかとなった。これらの特性がパーマスタイル実現に大きく寄与する可能性が示唆された。

  • 飯野 誠之, 秋元 航, 清水 湧太郎, 小田 和裕, 平井 公徳
    2024 年 58 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2024/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    皮膚の最外層に位置する角層は, 角層細胞と細胞間脂質から構成されている。細胞間脂質は主にセラミド・脂肪酸・コレステロール・コレステロールエステルから成っており, これらの構成成分は2分子の層状構造が連続したラメラ構造を形成することで, 物質が透過しにくい性質となる。オレイン酸は皮膚浸透促進効果を有することがしられている。一方, オレイン酸エステルの構造に着目した皮膚浸透促進効果に関する知見はあまり多くない。本研究では, オレイン酸と数種類のアルコールをエステル化して得られるオレイン酸エステルに, それぞれ皮膚浸透促進効果があるかどうかを調べるため, セラミドをターゲット物質として摘出ヒト皮膚を用いた皮膚浸透性実験に供した。その結果, 化粧品原料として新規の油剤であるオレイン酸イソブチルが浸透促進効果を有することを見出した。

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