2021 年 55 巻 1 号 p. 61-67
ポリオールが油水界面における界面活性剤の結晶構造に及ぼす影響を明らかすることにより,好感触かつ,安定性に優れた,新しいクリームクレンジング製剤を開発した。近年クレンジング化粧料に求められる品質として,「メーク落とし効果」と「洗浄後の適度な保湿感」があげられる。クリームクレンジング製剤は,多量の油滴が少量の水相に分散したO/W型エマルションであり,水や保湿剤の配合への自由度が高いことから,上記2つの要望品質を満たすことに適した製剤であると考えた。しかし本製剤は,低温で保管されるとシェアよって分離するという課題があり,界面科学的な検討が行われてきたが解決できていない。そこで筆者は,製剤における油水界面の結晶化挙動を分析することにより,低温での不安定化メカニズムを解明し,安定な製剤を開発する検討を行った。広角X線回折測定において,不安定化した製剤は,低温で油水界面の結晶構造がα型からβ'型へ多形転移し,その結晶性が高くなることが明らかとなった。疎水性の高いポリオールを活用することにより,低温での多形転移および,結晶化を抑制することが可能となり,製剤を安定化できることを明らかにした。