日本化粧品技術者会誌
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原著
ポジティブな感情が肌状態に及ぼす影響の検討
森河 朋彦中野 詩織井上 真由美征矢 智美松本 雅之引間 理恵高橋 慶人
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2021 年 55 巻 3 号 p. 255-261

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抄録

ネガティブな感情が肌状態に及ぼす影響に関しては多数の知見が存在するが,ポジティブな感情が肌状態に及ぼす影響は,経験的にはしられているものの明確でない。これまで,化粧品の肌への効果に関しては,製剤の直接的な機能による皮膚科学的なアプローチを中心に議論されてきた。一方で,化粧品の使用場面では,さまざまな心理変化が生じており,化粧時に喚起されるポジティティブな感情と肌状態との関連も考えられる。そこで,本研究では,スキンケアの化粧行為に関わる心地よい触覚刺激に着目し,それによって喚起されるポジティブな感情が肌状態に及ぼす影響を調べた。まず,心地よい触覚刺激を継続的に付与する試験によって効果を検証したところ,見た目の肌状態(肌の質感)の向上が確認された。次に,ポジティブな感情が肌状態に及ぼす影響を調べた結果,試験期間中にポジティブな感情がより喚起された高評価群は,低評価群と比べ,肌の質感が向上することが客観的に確認された。ポジティブな感情が肌状態に及ぼす効果の一端が明らかとなったことから,化粧行為を通じポジティブな感情を高めることも,肌状態を向上させるアプローチとして有用だと期待される。

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