2022 年 56 巻 2 号 p. 141-149
疲労は生物が感じる生理現象の1つであり,身体的および精神的要素が含まれる症状である。現代社会では多くの人々が日常生活で疲労を感じており,疲労の蓄積が原因で疾患発症や事故を引き起こすこともある。このようなことから疲労状態の把握は重要な課題であり,現在は企業においてもアンケートによるモニタリングなどが行われつつあるが,参加者や運営側の負担などから年に1, 2回レベルの実施に留まり,実効性には問題がある。実効性を高めるためには,簡便かつ精度の高いモニタリング技術が望まれる。一方,過去の研究において疲労と皮膚状態との関係が多く報告されていることから,われわれは皮膚情報を用いて疲労状態を把握する技術構築の可能性があると考えた。本研究では深層学習技術を活用し,テープストリッピングで得られた表皮角層細胞の形態情報から,主観的疲労指標および血液・尿から得られた生理的疲労指標を推定する技術の検討を行った。その結果,皮膚角層細胞画像からいくつかの疲労状態の推定が可能であることが示された。本研究は化粧品研究で培った皮膚分析技術を健康増進のために活用する新たな可能性を示したものである。