日本化粧品技術者会誌
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短報
加齢に伴う表皮の菲薄化のメカニズムに迫る 生活の質の向上のための天然機能性成分の提案
─レッドクローバー花エキス─
道善 聡森山 麻里子愛水 哲史岩野 英生羽田 容介森山 博由澤木 茂豊
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2022 年 56 巻 2 号 p. 166-174

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抄録

表皮菲薄化とは加齢に伴い表皮が薄くなる現象で,表皮幹細胞の減少がその原因であると考えられている。われわれは菲薄化メカニズム解明のため表皮幹細胞と周辺環境に注目した。表皮幹細胞は基底層付近において低酸素状態で維持され,転写因子hypoxia inducible factor-1α(HIF-1α)は低酸素環境の細胞で活性化する。正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)において通常酸素状態と比較し低酸素状態で培養したNHEKに高いHIF-1α転写活性が確認され,幹細胞マーカータンパク質であるmelanoma-associated chondroitin sulfate proteoglycan(MCSP)の発現量傾向も同様であった。成人由来NHEKで同様の試験を実施した結果,HIF-1αの転写活性とMCSPの合成量の低下が確認された。以上の結果から,HIF-1αの転写活性は加齢に伴い低下し,表皮幹細胞の未分化維持能の低下によって表皮細胞の供給量が減少し菲薄化が起こると推測した。さらに,レッドクローバー花エキスにHIF-1αの転写活性とMCSPの合成量の促進ならびに,ヒト皮膚における表皮の菲薄化および角層水分量の改善効果が認められた。これにより,レッドクローバー花エキスは肌トラブルを改善し,生活の質の向上が期待される。

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