日本化粧品技術者会誌
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デキストラン硫酸ナトリウムの化粧品分野への応用
加藤 一郎
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2006 年 40 巻 2 号 p. 110-116

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抄録
高脂血症を改善する医薬品として使われているデキストラン硫酸ナトリウム (DS) は皮膚の血行促進作用を示すことが臨床的に知られており, 種々の試験を行った結果, 表皮細胞から一酸化窒素 (NO) の産生を促進することが確認された。また, DSを三次元モデル皮膚に塗布し, 塗布部位の組織切片についてメタクロマジー染色を行ったところ, 角層から表皮にかけてメタクロマジー反応が認められ, DSが表皮まで吸収されていることがわかった。近年, NOは低分子情報伝達因子として広く研究が成され, 血行促進をはじめとするさまざまな生理現象の調節因子として働くことが知られている。このことから, DSによる血行促進作用は, NO産生に由来するものと考えられた。DSは血流量を増加させるので, むくみ改善効果が期待され, その効果を検証するために, ヒト評価試験を実施した結果, むくみ改善効果に加えてむくみ防止効果も認められた。これらの結果より, DSを皮膚に塗布すると表皮まで浸透し, 表皮細胞から弱いNO産生を促進させ, 生じたNOによって血流改善および水分の排泄が促進され, むくみの改善に寄与していると考えられた。
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