2024 年 31 巻 10 号 p. 73-82
過去20年間、西側諸国の軍隊は、ほぼ絶え間なく世界中で軍事作戦に従事してきた。この間、テクノロジーの進歩と相まって紛争の性質も変わり、現代の軍事作戦環境がかつてないほど不安定で、不確実で、複雑で、不透明になっていることは間違いない。しかし、紛争の性質が変わったとしても、紛争という人間の行為が、兵士に独特で強烈な生理学的、心理学的、認知的要求を課すことは、基本的に変わらない。その結果、軍事および科学分野では、ヒューマンパフォーマンスの最適化という概念がますます重視されるようになった。さらに、専門職としてのストレングス&コンディショニング(S&C)業界でも、兵士をはじめ、極限環境で働く人々を意味する“タクティカルアスリート”という概念が発展してきた。したがって、本ナラティブレビューの目的は、ヒューマンパフォーマンスの最適化の概念を概説すること、また現代の軍事作戦環境において要求されることは何かを検討すること、そして、兵士の指導を担当する現場のS&C専門職に、兵士の生理学的、心理学的、および認知的パフォーマンスを最適化するための、エビデンスに基づく推奨事項を提案することである。